62号 エレクトロニクス産業が超小型FCに参入

Arranged by T. HONMA
1.国家的施策
2.海外における公共機関の施策
3.PAFCの市場展開
4.SOFCの開発と事業展開
5.PEFC研究開発
6.住宅用PEFCの開発
7.マイクロFC
8.FCV最前線
9.水素生成および貯蔵技術
10.企業活動

1.国家的施策
(1)燃料電池戦略検討研究会;資源エネルギー庁
 資源エネルギー長官の私的研究会"燃料電池実用化戦略研究会(座長;茅慶大教授)"は01年8月8日会合を開き、FCVと定置式FCについて、それらの技術開発戦略をまとめた。今後、産官学の連携により、研究開発を集中的に展開し、05年までにFCVやFCを使った住宅用電源の実証実験に目途をつけ、10年から本格的な普及段階に移行することを謳っている。最重要課題としては、MEAなどの共通要素技術、水素貯蔵技術、液体炭化水素燃料の車上開発技術、GTL製造技術の開発が挙げられた。民間の研究開発が進んでいるFCVについては、2010年に5万台、20年に500万台、又家庭・業務用FCについては10年までに210万kW、20年に1,000万kWの普及を目指すことにしている。
(毎日、日本経済、日刊工業、日本工業、電気、日刊自動車新聞01年8月9日)

(2)PEFC/水素利用プログラム;経済産業省 
 経済産業省は、FCに関わる技術開発として"PEFC/水素利用プログラム"に重点を絞った来年度(2002年度)概算要求を行うことにした。先に開かれた産業構造審議会産業技術分科会技術評価小委員会エネルギー分野別評価WG報告書によれば、これまでMCFC、SOFCに重点を置いた燃料開発では、石炭ガスを利用した水素製造が重要視され、予算的にも大きかったが、最近のPEFC開発のテンポが速くなった情勢を踏まえて、水素製造利用技術開発に重点を移す方向になってきた。99年3月のMCFC技術開発のプレ最終報告書で「石炭ガスからの水素利用は現実的でなく、まずはそれを天然ガスで確立すべき」という指摘もなされていた。WGでは、これらの結果から、FCと燃料供給に関わる技術開発とその成果の活用シナリオを明確にし、そのシナリオに沿った技術テーマの選択と資源配分が必要であり、導入促進政策と一体化したプログラム方式で取り組むのが妥当であると指摘している。
(化学工業日報01年8月9日)

(3)FCV用水素スタンド;経済産業省
 経済産業省は、01年8月4日、FCV用インフラ整備のため、2002年度予算に14億円を概算要求することを明らかにした。水素供給スタンドを首都圏などに設置して、FCV公道走行試験を側面援助する。05年までにコストや安全性などの面で最適な供給方法を実証し、欧米各国とも情報交換して、FCVの安全性などに関する世界的な標準規格の作成にも着手したい意向である。
(産経新聞01年8月5日、日刊自動車新聞8月15日)

(4)FCVセンター設立;経済産業省
 経済産業省は、FCVの開発について、中核的な組織が必要であると判断し、実証実験も含めて実用化を推進するため、日本電動車両協会に"FCVセンター"を設置することにした。
(日刊自動車新聞01年8月10日)

(5)02年度概算要求;資源エネルギー庁
 資源エネルギー庁によると、02年度の新エネルギー概算要求額は1,532億円、前年度比38.6%増で、省エネ対策と並んで高い伸び率となった。総合エネルギー調査会新エネルギー部会の答申により、2010年度での新エネルギー供給量を現状の1%から3%に引き上げることになり、太陽光発電、太陽熱利用、クリーンエネルギー自動車の導入支援措置、FC等の予算創設や拡充が相次いだためである。FC関連では、技術開発が250億円で、特にPEFCシステム技術開発については52億円増の134億円の要求となる。水素エネルギー利用技術開発は29億円、クリーン燃料の実用化では、軽油の低硫黄化などの次世代環境対策技術開発に58億円、GTLに14億円、DME研究に56億円が計上されている。
(化学工業日報、日刊自動車新聞01年8月31日)
 

2.海外における公共機関の施策
 アメリカ・カリフォルニア州は、CFCPによってFCVの実証運転プログラムに主導権を発揮したが、今度は定置式FC発電プラントの普及を目指して、新しい施策を展開しようとしている。01年6月の初めに、その準備のための産官学によるグループが結成され、6月下旬には第1回の組織委員会が、同州環境保全局(California's Environmental Protection agency)の新しい本部ビルにおいて開催された。メンバーは州および連邦政府の各機関、カリフォルニア大学National Fuel Cell Research Center、US Fuel Cell Councilに代表されるような民間企業によって構成されている。知事の上級エネルギー担当顧問であるS.David Freeman氏は「今までFC技術はコスト有効性(cost effective)がないと言われてきたが、現在の電力価格や電力供給の信頼性が低下している現状を考えると、FC技術が非常に魅力的な代替発電プラントとして浮上してきた。今や州の経済状態や環境問題との絡みにおいてFC導入によるメリットは非常に高い」と語っている。
 Freeman氏は州知事によって提案されたカリフォルニア電力機構(California Power Authority)の第1の推進者である。そして産官学協議会を主催するこの機構を設立しようとする法律は州議会で審議が行われている。カリフォルニア大気資源局(California's Air Resources Board)の議長であるDr. A. Lloid氏、知事の顧問であるDr. W. Clark氏、カリフォルニア大学National Fuel Cell Research Center長のS. Samuelson教授が、産官学協議会の副議長を務めることになっている。
 FC導入の具体的な施策としては、Cal/EPA本部ビルに先ず1台のFCを設置する、現存するクリーンパワー法にFC導入を促進するための施策を盛り込む、FCプラントのコストを低減させるための買取(buy-down)制度を設ける、等が挙げられている。もし上記機構の設立が原案のまま受け入れられれば、同機構は$50億の公債を発行する権限を持ち、その内$10億は再生可能エネルギーに、$10億ドルはFCや水素を含む代替エネルギー技術の普及促進に当てられる予定になっている。Dr. Clarkは「我々は今や来年(02年)の夏までには、州の全域でFC発電プラントを設置するだけの能力(resources)と技術、ならびにその機会を持っている」と述べ、更に「8月27日から2日間の予定で、サクラメントで協議会主催の定置式FC発電に関するフォーラムを開く予定である」と語った。
(Hydrogen & Fuel Cell Letter, August 2001, Vol.XVI/No.8, p6)
 カリフォルニアのSouth Coast Air Quality Management District(AQMD)は、South Coast Air District内において、10ユニットの家庭用FCを実証するための提案を募集すると発表した。Websiteに詳述。
(ibid. p7)
 
3.PAFCの市場展開
(1)東京ガス
 東京ガスは、01年5月から施行されえた食品リサイクル法を意識して、9月にも生ゴミを燃料とするリサイクル型PAFCシステムを発売する予定である。FCの出力規模は50〜200kWで、食品工場やレストランなどで発生する生ゴミや食べ残しを専用タンクに入れて発酵させ、FCの燃料となるメタンガスを生成する。価格はFC本体が50万円/kW、生ゴミを発酵させる機器は3,000〜4,000万円で、導入企業には政府からFCについて最大1/3の補助金が支給される。リサイクル法の対象となる年間100トン以上の生ゴミを排出する企業は2,000〜3,000社に登っており、同社は初年度10台以上の受注を目指すことにしている。
(日経産業新聞01年8月3日)

(2)日本石油ガス
 日石三菱グループの日本石油ガスは、静岡県の医療法人西島病院からLPG仕様のPAFCシステムを受注(LN No.60参照)し、新病棟に設置した。PAFCは出力200kWでTIFC製、同病院全体の電力需要の26%を賄う。発電効率は39%、60〜70℃の給湯を含めた総合効率は80%で、省エネ率は31.5%となる。大地震などの災害時でも、2.9トン容量のLPGタンクで100時間は電源としての動作を続けることができる。FCシステムの価格は、kW当たり45万円弱、トータルでは1億5,000万円の投資になるが、半分を補助でカバーすることにより、11年で投資額を回収できる計算になる。
(日刊工業新聞01年8月16日)
 

4.SOFCの開発と事業展開
(1)電源開発
 電源開発は、SOFCを自家発電用電源として開発するとともに、業務ビルやホテル、病院などを対象に、販売活動に乗り出すことを決定した。5年後を目途に同社主導の新会社を設立する予定である。1台の出力は100kWで、当面は天然ガスを燃料として、発電効率は50%以上、1kW当たり30万円程度の販売価格を目標としている。電力需要が500〜1,000kWの施設に、1箇所当たり数台を組み合わせて売る計画である。又、将来は石炭のガス化ガスを燃料として、臨海部の工業地帯で集中的にSOFCシステムを稼動させることも想定している。
(朝日新聞01年8月5日)

(2)TOTO
 TOTOは衛生陶器の製造技術を応用して、低コストの円筒型SOFCを2004年度までに実用化し、分散型発電システムとして集合住宅や商業施設向けなど幅広い分野で事業化する計画である。01年度から4年間をかけ、NEDOからの委託事業として、出力10kWクラスのモジュールを開発する。同社のSOFC製造法は、液状の原料に基材を浸して成形する湿式法で量産に適しており、従来の蒸着式に比べて製造コストを10分の1に抑えられるとされている。これまで九州電力と協力して開発を進めてきた。
(日経産業新聞01年8月2日)

(3)ドイツRWE
 世界で最長時間の運転実績を持つSiemens Westinghouse製100kWSOFCコジェネレーションユニットが、オランダからドイツに移され、新しいサイトで発電運転を再開することになった。オランダでは過去2年間、性能を全く低下させることなく発電運転が続けられた。今度運転を担当するのはドイツ最大の電力会社RWEであり、設置場所はEssenにあるRWEの敷地、Meteorit ParkのFuel Cell Pavilionである。発電出力は110kWACで系統に連系され、排熱は近い将来熱湯貯蔵システムに導入される予定である。02年には同じくSiemens Westinghouse製の300kWSOFC/GTコンバインドサイクルが同じ敷地に設置されることになっており、このプラントはRWEを中心とするコンソーシアムによって運転されることになろう。
(Fuel Cells Bulletin, September 2001, No.36, p5)
 

5.PEFC研究開発
 産業総合技術研究所(産総研)は、2002年度から3ヵ年計画で、ガソリン、メタノールなどの液体燃料を直接供給できる次世代PEFCを開発するため、電極触媒の活性評価方法、燃料電極反応、電解質膜内での物資輸送機構の評価法について、研究開発を実施することにした。改質触媒は01年度までに得られた研究成果に基ずき、多成分触媒などの高性能触媒の評価を進める。今回の研究開発は"FCの電極触媒を改造することにより電極上で改質反応を行わせる内部改質法の基盤技術を確立すること"に目標が置かれており、電極触媒と電極反応に及ぼす不純物の影響評価などを実施したいとしている。最終年度には設計指針を確立する予定。液体燃料を直接利用できるPEFCは、コスト的に有利で、機器自体の小型化が可能になるので、携帯機器の分野での利用も期待される。
(化学工業日報01年8月10日)
 
6.住宅用PEFCの開発
(1)GM
 GMは01年8月7日、幅広い用途で使用が可能な汎用PEFCの試作品を開発し、一般住宅や事務所に設置する定置型発電装置の開発に目途をつけたと発表した。天然ガス、メタノール、ガソリンの何れも燃料として利用可能であり、最大出力は5kW。「電池の大きさを用途に合わせて変えることができるため、一般家庭から工場まで、あらゆる場所で電源として使える」と同社は述べている。今後は、生産コストの低減などに努め、2003〜05年には商品化する意向である。
(朝日、日刊工業、日本工業、電気、電波、日刊自動車新聞01年8月9日)
 GMはFCに最も適した利用分野は、産業界、オフィスビル、病院等におけるバックアップ電源としての適用であると見ているようである。しかし、同社のR&Dおよび企画担当の副社長Larry Burns氏は「目下のところ、我々が持っている技術を、定置式FC電源に応用してビジネスを展開しようと決定しているわけではない。しかし、FCを分散型定置式電源として商用化するために協力が可能な幾つかの企業とは既に接触を持っている」と述べている。
(Fuel Cells Bulletin, September 2001, No.36, p1)

(2)富士電機
 富士電機は都市ガスを燃料とする出力1kWの定置式PEFCコジェネレーションシステムを開発し、連続1000時間の実証運転に成功した。改質器、CO変成器、CO除去器は一体化してコンパクトに纏められており、出口ガスのCO濃度は10ppm以下で、改質効率73%を記録した。直接接触式熱交換器を採用することにより、夏でも外部から水の供給を必要としない自律運転が可能で、PEFCスタックと改質器は、幅と高さが共に1,100mm、奥行き400mmの容器に収められている。又60℃の温水は貯輸槽に蓄積される。 同社は02年度までには数kWから十数kW規模のPEFCシステムの製作に取り掛かる予定であり、燃料としてはプロパンも検討対象に加えることにしている。商用では業務用もターゲットにして、これは05年での実現を目指す。
(日刊工業新聞01年8月27日)

(3)大阪ガスと三洋電機
 大阪ガスと三洋電機は01年8月27日、家庭用コジェネレーション用PEFCを共同研究開発することで同意した。大ガスが天然ガス燃料改質技術の詳細な情報を三洋に供与する他、運転研究を共同で行い、三洋が開発を進めている1kW級家庭用PEFCについても、共同で改良することになっている。今までに開発された1kW級家庭用PEFCシステムでは、28%の発電効率を達成した。研究期間は2003年度までで、05年度中の商品化を目標としている。三洋によると当初の値段は60万円程度を見込み、量産化で40万円程度にまで引き下げたいとしている。給湯を利用できれば、光熱費が年間15万円程度の家庭において、1万5000円から3万円の節約が可能になり、早ければ13年程度でシステム導入費を回収できる計算になる。
(日本経済、産経、日経産業、東京、日刊工業、電気、日本工業 朝日、毎日、読売新聞、化学工業日報01年8月28日)
 

7.マイクロFC
(1)ソニー
 ソニーは、01年8月10日、FCの小型化を実現する技術を開発し、FC分野に参入することを明らかにした。これは電解質膜に炭素分子"フラーレン"に酸素と水素の原子を付けた化合物を使ったFCで、水分が無くても電解質中を水素イオンが移動できるため、水を送り込む必要がないなど、大掛かりな装置を使う必要のない点において大きな特徴を持つ。燃料となる水素は合金から供給される。ソニーは今回開発した技術を具体的にどう製品化するかは未定としているが、小型化が実現すれば、家電や携帯電話などの電源に利用することも可能になると述べている。
(朝日新聞01年8月10日、電気新聞、化学工業日報8月13日)

(2)Mechanical Technology
 アメリカのMechanical Technology Inc.は、01年8月1日、the National Institute of Standard and Technology(NIST)の Advanced Technology Program(ATP)により、460万ドル以上の開発資金を獲得した発表した。NISTはアメリカ商務省の技術本部(Technology Administration)の1部門であり、生産性の向上、貿易の促進、生活レベルの向上をその業務の目的とする国家的機関である。本計画の基本的な目標は、同社によって開発されたDMFCを、他の会社との技術協力によって、高度なマイクロFCシステムに仕上げることであり、提案されているシステムは、現在の携帯電話が内蔵するバッテリと同様のサイズで、持続時間は長く、燃料補給が瞬時に可能であること、それに環境に優しいことが謳われている。Mechanical Technologyの第1のパートナーは、電解質膜を受け持つDuPont、微小空間での電気力学的流体制御システム(micro-electromechanical fluid management system)の設計と製作で協力するUAIM(the University at Albany's Institute for Material)、その他が予定されている。Mechanical TechnologyのDr.William P. Acker社長は「競争の激しい資金グラントの獲得は、我々のチームが持つ技術力の強さ、およびFC電源をマーケットに持ち込むアプローチの正当性を物語るものであり、今年の1月にマイクロFCの運転を発表して以来、速やかな前進を遂げられたことに満足している」と語っている。
(Fuel Cells Bulletin, September 2001, No.36, p1)

(3)NEC等
 NEC、科学技術振興事業団、および産業創造研究所は、01年8月30日、カーボンナノチューブを電極に用いた携帯電話等携帯機器用電源として利用できる超小型FCを開発したと発表した。活性炭を用いた従来のPEFCに比べて出力が約2割向上することが確認されている。今回の成果はカーボンナノチューブの1種である"カーボンナノホーン"(端が閉じた角状の突起物)の微小で特異な構造を電極材料として利用することによって達成された。メタノールが電極に触れると、水素が発生し、酸素と反応して電流が流れる。更にカーボンナノホーンをCO2レーザ蒸発法で作製するときに、白金触媒を同時に蒸発させるとカーボンナノホーンの表面に白金微粒子が自然に付着することが分かり、従来のプロセスに替わって大幅にコストダウンできる可能性が期待されている。又このプロセスでは、白金の粒子径を2〜3nmにまで微細化できるため、電極性能を更に向上させることができる。エネルギー密度は、リチウムイオン電池の10倍で、携帯電話では1ヶ月以上、ノートPCでは数日間の連続使用が可能になるものと期待されている。NECは今後、この技術に改良を加えて、2003年から05年頃に実用化したいと語っている。
(毎日、読売、日本経済、日経産業、日刊工業、日本工業、電気、電波新聞、化学工業日報01年8月31日) 
 

8.FCV最前線
 (1)GM
 前述したようにGMは、定置式発電用5kWプロトタイプを発表したが、同時に次世代ガソリンプロセッサーについても、ミシガン大学で開かれたAutomotive Briefing Seminarにおいて公開した。このクリーンガソリン改質装置"Gen III"は、出力25kWの"GM's Stack 2000"と組み合わせて、小型トラック"Chevrolet S-10"に搭載された。GMの研究者は、この燃料改質プロセッサーについて、改質効率を犠牲にすることなく、サイズを1/3にまで小型化することに成功し、スタックと組み合わせた総合効率は40%に達したと語っている。スタックについてもコンパクト化に成功しており、HydroGen1に用いられたものに比べて出力密度が25%向上した。
(Fuel Cells Bulletin, September 2001, No.36, p1 )

(2)トヨタ
 トヨタ自動車は、01年8月23日、アメリカ・カリフォルニア州にあるトヨタテクニカルセンターに、政府関係者、マスコミ、環境オピニオンリーダ等20人を集め、FCテストカー"FCHV−4"を公開、デモ走行を実施したと発表した。同社はCFCPに参加し、7月末から公道試験を開始している。FCHV−4のPEFC出力は90kW、高性能2次電池を搭載しており250km以上の航続距離と時速150km/hを実現している。
(毎日、日刊工業、日刊自動車新聞01年8月24日)

(3)ホンダ
 本田技研工業は、03年に予定しているFCV市販第1号車を、車両性能の優位性を考慮して、純水素式にすることを決めた。この市販第1号車は販売の対象や台数を限定する事実上試験販売とする意向で、早期に市販を実現することにより同社の環境イメージを高め、全ラインアップの拡販に結び付けたい意向のようである。
(日刊自動車新聞01年8月28日)
 

9.水素生成および貯蔵技術
(1)電制
 電制(札幌市)は、白ありから抽出した菌で生ゴミを分解して水素を生成する技術を開発した。北里大学の田口文章教授が発見した白あり菌を活用したもので、この方法では12〜24時間で水素が発生する。実験では250gのりんごから658lit.の水素を取り出すことができた。一般的なメタン発酵の2分の1か3分の1の時間で分解するため、プラントを小型化できるとともに、運転費用も安くなると期待されている。今後行政や環境機器メーカなどと協力して、1ないし2年以内にプラントを建設する計画を考えている。同社は水素を有機化合物と反応させて液体の状態で貯蔵する技術も開発しており、FCを支える技術として売り込む方針である。
(日本経済新聞01年8月7日)

(2)トヨタ
 トヨタ自動車は、FCVの航続距離をガソリン車並みのレベルに伸ばす技術に目途をつけたと云われている。 同社は現在の250気圧から700気圧程度に高圧化した水素ガス容器を、燃料充填時における安全性や衝突時の安全対策を確保した上で車両に搭載する技術に見通しを得た模様である。
(日刊自動車新聞01年8月1日)
 

10.企業活動
(1)大阪ガス
 大阪ガスは、カーボンナノチューブ(CNT)を日産kg規模で生産するミニプラントを建設し、電子、自動車メーカなどへサンプル出荷を開始した。同社のCNTは70%の高純度で水素吸蔵能も3wt%と、水素吸蔵合金のトップデータを上回っており、FCV用水素吸蔵材としての利用条件を満足しつつある。 引き続きCNTの低コスト量産を目指して新炭素原料の探索を進め、3年以内に10wt%の高水素吸蔵能CNT生産に目途を付け、CNT電極材の実用化や水素吸蔵材普及に拍車をかけたいと考えている。
(日刊工業新聞01年8月3日)

(2)荏原
 荏原は電力・ガス会社と連携して、工場や店舗向けに環境負荷の低い自家発電装置を拡販する方針を決めた。中国電力、出光興産、三菱電機などが01年10月に設立するLNG販売会社"エネルギア・ソリュウション・アンド・サービス"に出資し、LNGを使う小型ガスタービンやFCなどの販売とメインテナンスを請け負うことにした。
(日経産業新聞01年8月20日)

(3)豊田通商
 豊田通商は、01年8月30日、カナダのハイドロジェニックス(オンタリオ州)との間で、FC評価装置の日本での総販売代理契約を結んだと発表した。9月から自動車メーカなどに本格販売することにしている。ハイドロジェニックスの評価装置は、FCスタックとセルを対象に、発電量、燃料ガスの組成、温度、湿度など装置の作動環境を分析することができる。価格はセル用が1,200〜1,800万円、スタック用が7,000万〜2億円で、既に受注を受け付けており、初年度3億5,000万円の売上を見込んでいる。
(中日新聞01年8月31日)
 


 
― This edition is made up as of August 31, 2001. ―