61号 携帯用DMFCスタック実証と商品化計画

Arranged by T. HONMA
1.国家的施策
2.海外での国家的施策
3.地方自治体の施策
4.PAFCの市場展開
5.SOFCの開発
6.PEFCの研究成果
7.PEFCの開発と事業化
8.DMFCの開発
9.FCV最前線
10.燃料関連技術
11.その他

1.国家的施策
(1)経済産業省
 経産省とトヨタ自動車、GMなど国内外の自動車メーカは、2002年度にFCV実証走行試験を共同で実施することにした。試験には日産自動車やホンダ、ダイムラークライスラーなども参加する見込みである。東京近郊で実施し、集めたデータは環境や安全基準の策定、走行性能の確認などに活用する予定で、走行に必要な水素などを供給する専用スタンドも設置することにしている。経産省は02年度から3年間で、30〜40億円の予算を見込んでいる。
(日本経済、日刊工業新聞01年7月11日)
 経産省は2002年度予算概算要求に盛り込む研究開発プログラムの全容が明らかになった。総合科学技術会議(議長・小泉首相)が重点テーマとして掲げたライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料の4分野に加えエネルギー、製造技術の2項目を追加し「FCの開発を強化する他、ロボットなど日本が得意とする"ものづくり"産業の競争力を高める」ことを目指すと謳っている。同プログラムは01年8月初めに開かれる産業構造審議会・産業技術分科会・研究開発小委員会で正式に決定される。エネルギーでは、FCVを2010年に5万台、2020年には500万台まで普及させるという目標を掲げ、水素供給ステーションなどインフラ整備に乗り出すと述べている。
(日本工業新聞01年7月13日)

(2)経産省、国土交通省、環境省
 経済産業省、国土交通省、環境省は、低公害車の開発および普及に向けたアクションプランを纏めた。2010年までのなるべく早い時期に、実用段階の低公害車を1,000万台以上、FCVについては5万台の普及を目指すことにしている。
(日刊工業、日本工業、日刊自動車新聞、化学工業日報01年7月12日、電気新聞7月19日)
 

2.海外での国家的施策
(1)アメリカ連邦政府
 アメリカのBush大統領は、DOEを訪れてFC技術の幾つかの例を見聞した後、議会に新しいエネルギー開発計画を提案したことを公表した。この2日前には、議事堂のある小さな丘(Capitol Hill)にあるCannon House OfficeビルにおいてFCの展示があり、議会や政府関係者、新聞記者の多くが立ち寄った。大統領は、DOEの職員を前に、FCを初め先進型エンジン、水素技術、高効率機器の開発を加速するため、8,570万ドルの連邦政府補助金(Federal grants)を計上したことを明らかにした。DOEの予算を含めると、上記プロジェクトの総額は、1億850万ドルになる。これらのプロジェクトの中には、改良型カソード、高温膜、最適化されたガス拡散層を持つMEAの開発(3M, St.Paul;774万ドル、同DeNora North America; 1,330万ドル)、車上で高純度の水素を生成する技術、および5kgの水素貯蔵能力を持つ中型セダンでの車載水素吸蔵合金の開発(United Technologies, East Hartford; 2,268万ドル等が含まれている。
(Hydrogen & Fuel Cell Letter, July 2001, Vol.XVI/No.7, pp1-2)

(2)アメリカDOEの交通用FC計画年次報告会
 01年6月6日から8日にかけてOak Ridge国立研究所で開催されたDOEの自動車用FC計画年次大会(Energy Department transportation fuel cell program's annual review meeting)では、特にPEFCに関する35以上の研究開発プロジェクトによる研究成果が発表され、175人以上の専門家が参加した。本大会での特に注目された成果として、白金の担持量が非常に少なくしたカソード用合金触媒、低コストの合成バイポーラープレート、水蒸気改質マイクロチャネルが挙げられている。
 DOEのプログラムマネージャーであるJoAnn Milliken女史は、2008年まで延長されたFC研究開発プログラムにおける修正された技術的な達成目標を示すとともに、少なくとも10年後を見通して、FCVを市場に浸透させるために解決しなければならない課題として、コスト、耐久性、空気供給系(コンプレッサー技術)、起動性(燃料改質システム)、および熱/水管理技術を挙げている。
 Pacific Northwest National Laboratory(PNNL)のLarry Pederson氏の研究グループは、非常にコンパクトな10kW級水蒸気改質マイクロチャネルの研究開発で、2001年国立研究所FC研究開発賞を受賞した。最初の実証実験は、イソオクタンの基準ガソリン(isooctane and benchmark gasoline fuel)によって行われ、高い効率を計測したが、なお軽量化、コスト、起動時間において課題が残されていると述べている。
(Hydrogen & Fuel Cell Letter, July 2001, Vol.XVI/No.7, pp6-7)

(3)カナダ政府
 カナダ政府は、01年6月、輸送交通機関からの排気対策プログラムを発足させ、それに1億900万カナダドルを支出すると発表した。これは気象変動に対するアクションプラン(5億カナダドル)の1部で、FCV関連の課題が含まれる。プログラムでの主要なテーマは、交通用FC協議会(Transportation Fuel Cell Alliance)によるFCV燃料の選択、供給インフラに関する調査検討であり、燃料供給方法、燃料供給ステーションのための安全基準、ステーションの運転要員の教育と検定プログラムの作成等が具体的課題として挙げられている。更にこの協議会は、FC技術の普及によって達成されるグリーンハウスガスの削減効果についても解析する予定である。この発表と共に配布された政府関係の資料(government fact sheet)によれば、水素およびFC技術の導入は、2010年までには年間9万トン、2020年までには同265万トンのグリーンガスの削減を齎す効果があると予想されている。現在予想されている燃料供給パスとしては、大規模および小規模分散型天然ガス改質、水電解方式、大規模集中型水素生成プラントと液体水素タンカーによる水素の配送、メタノールステーション等が候補として挙がっている。
(Hydrogen & Fuel Cell Letter, July 2001, Vol.XVI/No.7, pp7-8) 
 

3.地方自治体の施策
 都心部に流入する自動車通行に課金する"ロードプライシング"を検討していた東京都の諮問機関"ロードプライシング検討委員会"は、01年6月27日に最終報告書を公開した。この報告書を受け、都は課金料金を割引く対象となる低公害車として、メタノール車、電気自動車、天然ガス自動車、液化石油ガス自動車以外にFCVを指定している。今後はネットなどを通じて都民や関係業界から意見を集め、2003年度以降の条例化を目指す方針である。
(日本経済新聞01年6月28日)
 
4.PAFCの市場展開
 東邦ガスは01年夏から、ホテルや事務所ビル、大型マンションなどを主なターゲットとして、PAFCの営業を本格的に開始することにした。東邦ガス管内でも、工場やスポーツ施設などでこれまで11件の導入例があるが、いずれも実証試験の段階であり、ビジネスとしての成功例はなかった。しかし、富士電機が出力50kWおよび100kWの2種機で、従来製品に比べて30%割安(同社)の低価格システムを発売すると発表しており、これを使えば「補助金などを活用することにより、通常のコジェネレーション方式に比べて遜色のない経済的レベル」を実現できる見通しができたと判断している。なお、富士電機が製品化した新機種は、名古屋ワシントンホテルプラザでの実証試験で、既に2年間トラブルによって停止することなく運転が続けれている。
(中日新聞01年7月5日)
 
5.SOFCの開発
(1)電源開発と三菱重工業
 電源開発と三菱重工業は、天然ガスを燃料とする出力10kWの内部改質型SOFCによって、発電効率45.5%を達成したと発表した。8月までに電発若松総合事務所で700時間の連続運転を実施し、データを確認することにしている。三菱重工が印刷技術を応用して開発した湿式スリラー焼結法によって、長さ720mmの円筒型セルを製作し、これを束ねて出力10kWのスタックを組み上げた。この製法は従来の溶射法と比べてコストが10分の1にまで低減すると同社は述べている。改質は0.3Mpaの加圧化で行われるが、改質反応温度域の最適化によって加圧の問題が克服されたという。今後はスケールアップを目指して構造を簡素化かつコンパクト化し、経済性や運用性に関する評価を進めながら、100kW級の開発を数年以内に具体化する予定である。この100kWSOFCをガスタービンと組み合わせた複合発電システムとすることにより、発電効率50%を実現、又コストは30万円/kWまで低減させることを目指している。又2003年3月に電発が実証運転を開始する石炭ガス化プラントと組み合わせて、コンバイインドサイクルによる大型発電設備を実現することも計画している。
(日刊工業新聞01年7月18日)

(2)電力中央研究所
 電中研はSOFC電極材料の構造を、原子レベルで解析することに成功した。観測の対象となった材料は、ランタンマンガナイトで、大型放射光施設"Spring-8"内に設置した加熱装置を使って発電状態に近い700℃に加熱、高エネルギーのエックス線を照射して、光の吸収状態から同材料の細部構造を解析した。ランタンとマンガン、酸素に少量のストロンチウムを混入して作られたランタンマンガナイト電極の原子同士の間隔が、ストロンチウムの量に応じて変化したり、常温時に比べてそれが数%広がる様子を観測することができたと報じられている。ランタンなどの重い原子の解析には、高エネルギーの光が必要で、従来このような観測は不可能であったが、Spring-8のX線は非常に強くて加熱装置をも透過するため、高温状態にある試料の細部が観測できたわけである。
(日経産業新聞01年7月18日)
 

6.PEFCの研究成果
(1)東北大学と韓国KAIST
 東北大学寺崎助教授らと韓国科学技術研究所(KAIST)は、白金のナノ粒子を高分散に担持することが出来るような、規則的なナノ細孔炭素を合成する方法を開発した。これは、内径が6ナノ、外形が9ナノ程度の、均一でかつ調整可能な細孔径を規則的に配列したナノ細孔炭素を合成する普遍的な戦略であり、他の一般的なマイクロ細孔炭素材料とは比較にならない程、白金ナノ粒子を高分散に担持することを可能にする。具体的には、規則配列を持つメソポーラスシリカを鋳型に用いる方法で、この鋳型を取り除くと部分的に秩序化した黒鉛の骨格が形成される。白金クラスターの直径は、3ナノ未満にまで制御可能で、これらを高分散化することにより、酸素還元用に有効な電極触媒活性を生じさせることができると期待されている。
(日本工業新聞01年7月12日)

(2)山梨大学クリーンエネルギーセンター
 山梨大学クリーンエネルギーセンターの渡辺教授は、COを選択的に除去するための新しい触媒の開発に成功した。これは原理的には、金属を担持させたゼオライトの細孔内でCOと酸素が高効率で反応してCO2になる現象であり、特に金属として白金―鉄合金を使用した場合には、100℃の低温でも100%CO2に変化する。すなわち、ゼオライトの特異な吸着効果により、COと酸素を細孔内に濃縮し、担持した金属のクラスター上で選択的にCO酸化を行わせる仕組みである。特にモルデナイト型ゼオライトを担体として用いると、選択性、酸化活性がより高くなる。又利用する金属としては、白金単体よりもルテニウムや鉄との合金として利用する方が、酸化反応活性が更に向上することが分かった。これまで量論比の酸素濃度でCOを100%CO2に転化する触媒は知られておらず、PEFC用燃料前処理触媒としては極めて有用と考えられる。
(化学工業日報01年7月9日)
 

7.PEFCの開発と事業化
(1)日石三菱
 日石三菱は、01年7月に発足した新エネルギー本部FC事業部(35人)を核に、石油、LPGを燃料としたPEFCの開発を加速することにした。同社はPEFCを最重点開発課題と位置付けており、先ずLPG開発については、日本石油ガスが行っている家庭用FCの開発部隊を統合、一挙にフィールドテストに持ち込む意向である。その他の石油系では現在実証中のナフサを燃料とする定置式に加えて、開発が難しいと云われている灯油についても、関連する技術の開発に着手している。又同事業部は、FCV普及を目指してのクリーンハイドロカーボン燃料(CHF)の開発や水素貯蔵も含め、PEFCに関連する技術については全般的に取り組むことを計画している。
(日刊工業新聞01年6月26日)
 日石三菱は01年7月12日、日石三菱トレーデイングが運営する根岸サービスステーションに設置したライトナフサを燃料とする出力5kWのPEFCシステムを公開し、フィールドテストを開始した。2002年度まで実証運転を続け、運転状態を横浜精油所で遠隔操作する。PEFCスタックはアメリカ製, 発電効率36%、総合エネルギー効率75%を目標とし、公表されているFCユニットサイズは幅1.9m、奥行き0.9m、高さ1.85mと報告されている。他方、改質器は脱硫、改質、CO除去装置が1体化されてコンパクトに仕上がっており、出口でのCO濃度は10ppm以下、水素濃度74%を実現している。このシステムは実用化に向けた最終段階の実証プロトモデルであり、その利用目的は、災害時においても地下タンクに貯蔵された燃料で2ないし3日間は単独運転が可能で、緊急時の給油ができるというものである。ナフサ燃料を2kl.貯蔵すれば、1,000時間の運転が可能であると予想されている。又貯湯槽300lit.を併設している。
(日刊工業新聞01年7月13日、化学工業日報7月17日)

(2)エヌ・イー・ケムキャット
 NEケムキャットは、PEFC用の改質触媒の開発に着手することにした。同社は同じグループに属するアメリカのエンゲルハードが、銅、ニッケルなどのベースメタルを素材とする改質触媒の開発を手がけていることから、開発の重複を避けるため改質触媒にはタッチしない方針であった。しかし、FCVの実用化を目指す自動車メーカーなどの取引先から、貴金属を素材とする改質触媒の開発要望が強まっているため、同社の得意とする貴金属を用いる改質触媒に限って同分野に参入することにした。
(日刊自動車新聞01年7月21日)

(3)日清紡
 日清紡は、PEFC用セパレータの供給体制を拡充することにした。同社は現在、研究開発センターに年間100万枚の試作規模の設備を導入し、主にユーザの評価用に供給しているが、2002年春を目途に国内の綿紡績工場に生産を移管し、生産能力を年間200万枚以上に引き上げることにしている。同社の製品はカーボンを成形したもので、強度が高いことに特徴がある。投資額は約13億円、セパレータの需要拡大に備えるとともに、縮小を余儀なくされている綿紡績工場を新材料の拠点として活用し、雇用を確保する狙いもあるものと思われる。
(日本工業新聞01年7月11日、日経産業新聞7月27日)

(4)日本電池
 日本電池は、白金使用量を現在の10分の1にまで減少させる技術を開発しているが、約60W出力級の拡散電極を用いた実験によって、COによる白金の劣化がほとんど起きないことを確認した。1kWのPEFCを2002年に完成させ、定置用、自動車用としてPEFCの実用化を目指して、耐久テストを本格化させる予定である。
(日刊工業新聞01年7月5日)

(5)松下電器産業
 松下電器産業は、01年6月30日、家庭用PEFCコジェネレーションシステムのコストダウンを図り、2004年春にそれを市場に投入すると発表した。燃料はメタノールと都市ガスを予定している。
(産経新聞01年7月1日)
 

8.DMFCの開発
 自動車用バッテリー大手のYUASAは、99年度から経済産業省の補助事業として(財)国際環境技術移転研究センターと共同で、DMFCの開発に取り組んできたが、01年7月25日、出力200WのDMFCスタックの開発に成功したと発表した。燃料は濃度3%のメタノール水溶液で、酸化剤には空気を使い、90℃の温度で出力200Wを長時間に亘って維持できることを確認した。セパレータ板に独自の流通構造を採用し、更に電極にも高活性触媒を効率的に機能させることにより、出力の安定化が図られたと説明されている。試作品の仕様は、電圧12V、最大電流17Aで、スタック当たり34セル、サイズは幅336mm、奥行き120mm、高さ132mmとなっている。01年10月までに家庭用電源用のシステムを完成し、2003年での商品化を目指すとともに、今後可搬式携帯電源や電力インフラの整備が難しい地域向けの分散型電源として普及を図ることにしている。
(化学工業日報、日本経済、日経産業、日刊工業、電波新聞01年7月26日)
 
9.FCV最前線
(1)プジョー・シトロエングループ
 フランスの自動車大手プジョー・シトロエングループ(PSA)は、フランス原子力庁(CEA)、国立科学研究所(CNES)とFCV用FCの開発で提携した。PSAは5,000万ユーロ(約53億円)を投資し、出力30kWのFCを開発しているが、実用化のためにはFCを5分の1にまで小型化することが必要であるとの観点から、公的機関との協力に踏み切った模様である。他方CEAは原子力以外のエネルギー分野での研究拡大に積極的であり、両社の思惑が一致した。2005〜10年にFCVを実用化すると述べている。
(日本経済新聞01年7月13日)

(2)ホンダ
 ホンダは01年7月19日、FCVの"FCX−V3"を、栃木県の同社技術研究所で報道陣に公開した。同社はアメリカ、カリフォルニア州サクラメントとロスアンジェルス間で3台を公道試験運転を実施し、3台合計で走行距離が5,600kmに達している。日本ではその内1台を戻して、栃木県の高速道路などで公道試験を開始しており、02年6月まで山岳路や渋滞道路を含む多様な条件下で走行試験を続け、2003年にも商品化したいとの意向である。同車は最高時速130km/h、100lit.の高圧水素ガス(250気圧)タンクで約180kmの走行が可能、又バッテリーの替わりに瞬発的放電に優れたウルトラキャパシタを採用しており、アクセルペダルを踏んでから数秒後には時速80km/hにまで達するなど、優れた加速性能を備えている。開発を統括する加美陽三上席研究員は、記者会見で「発進時の加速などFCVの走行性能はガソリン車なみにまで高まった。これまでのところ故障などのトラブルはない。しかし実用化のためには水素の貯蔵方法など、まだ未だ多くの課題が残されている」と語っている。2001年末には最初の実用車を世にだすためのプロトタイプ車"FCX−V4"を登場させる予定であるが、このV4では水素ガスの圧力を350気圧にまで高め、走行距離を250kmにまで延長するとともに、FCスタックも一層コンパクト化されるものと期待されている。
(日本経済、毎日、東京、産経新聞01年7月20日、朝日新聞7月22日、日経産業、日本工業、日刊工業、電気新聞7月23日)
 ホンダは01年7月11日、太陽光発電から水電解で水素を生成する水素製造ステーションを建設したと発表した。アメリカ・カリフォルニア州で試験走行しているFCVに水素を供給するのが目的で、1年間に250気圧の水素をFCV1台分の必要量に相当する7,600lit.製造することができる。
(朝日、読売、毎日、日経産業、日刊工業、日本工業、日刊自動車、電波新聞、化学工業日報01年7月12日)

(3)日本電動車両協会
 日本電動車両協会は、01年7月11日、FCVの実用化を促進するため、協会内に"FCVセンター"を設置し、同時にFCEV特別推進部会を新設したと発表した。
(日本工業、日刊工業、日刊自動車新聞01年7月12日)

(4)石油活性化センター
 石油活性化センターが主催し、01年2月15日から6月末まで横浜市を中心に実施したFCV公道走行実証テストにおいて、ダイムラークライスラーのメタノール改質FCV "Necar-5" が、トータルで1,500km以上を走行し、排ガスもNOxも発生濃度がゼロ、ハイドロカーボンは規制値の1/4しか発生しないクリーンな自動車であることを立証した。走行テストには高速道路も含まれ、三浦半島の最先端までもドライブした。ダイムラー社は「04年に出すFCVは、水素かメタノール改質かの何れかになる。スタンドの問題もあり、今は1つに絞り込んでいない」と語っている。
(日刊工業新聞01年7月10日)

(5)富士重工業
 富士重工業は、01年7月6日、軽トラック"スバル・サンバー"をベースにしたメタノール改質方式FCVの試作車を開発したと発表した。今後は資本提携先のGMとも協力し、更に実用化に向けた研究開発を進める。
(読売新聞01年7月7日)
 

10.燃料関連技術
(1)広島大学、マツダ等
 広島大学の藤井博信教授とマツダなどのグループは、水素の含有能力が高いマグネシウムと放出しやすいパラジウムを複合化することによって、従来のそれに比べて3倍近い量の水素を100℃以下の低温で吸ったり吐いたりすることのできる水素吸蔵合金の開発に成功した。この性能はIEAが設定した目標値をほぼ満たすものである。これは半導体の製造に使うスパッタ法により、厚さ約50nmのパラジウム合金と、厚さ50ないし200nmのマグネシウム合金を相互に積層して仕上げた構造の合金で、従来のそれよりも軽く、量産効果も期待できると研究者は話している。電子線やエックス線で薄膜の状態を解析したところ、柱状に縦方向に並んだマグネシウム原子が水素原子を吸着して水素を蓄えると共に、放出過程ではパラジウム合金膜が収縮するためにマグネシウム合金にひずみが生じ、水素を放出することが分かった。
(日経産業新聞01年7月18日)
 藤井教授等は、黒鉛に大量の水素を貯蔵する技術を開発した。2〜3気圧、常温で1kg当たり74gの水素を蓄えられることを確認した。これは重量当たり7%の水素貯蔵量であり、IEAの水素貯蔵技術の目標性能に達したことになる。吸収材はビー玉状の黒鉛を金属缶に詰め、缶を振って黒鉛玉を粉砕したものであり、玉がぶつかり合った時にできる数十nmの微小な穴に水素がたまる仕組みになっている。水素をタンクに蓄えるよりも安全性が高いことから、水素FCVに有効な技術として、今後実用化に向けて研究を進める事にしている。
(日本経済新聞01年7月27日)

(2)エネ総工研
 エネルギー総合工学研究所は、01年8月からFCV用燃料の軽質ナフサ、GTL,DMEについて、それぞれ環境負荷に対する調査を実施することになった。調査範囲は、原料の採取から燃料の製造、製品の輸送、燃料の充てん場所までを含み、製品の得率やCO2などの排出データ、輸送過程での環境データなどをベースに、総合的な環境負荷を算出する。
(化学工業日報01年7月10日)

(3)ごみの価値
 生ゴミを発酵させてメタンを取り出し、それをPAFCに導入して発電するシステムは、総合建設会社の鹿島が2000年3月に商品化しているが、この方法によれば生ゴミ1トンで約580kWhの電力が得られると評価されている。
(毎日新聞01年7月18日)

(4)日平トヤマ
 日平トヤマは水素エネルギー研究所の委託を受け、積水化学工業、豊田自動織機と共同で、水素発生液体燃料の開発に着手した。水素エネルギー研究所は、NEDOの委託により液体燃料"水素化ホウ素ナトリウム"を使う発電システムの開発に着手しているが、日平ヤマトはイオン反応膜で仕切られた電池内に液体を注入する装置の製造を手がけることにしている。
(北国新聞01年7月17日)

(5)日東工器
 日東工器は、家庭用FCシステムで改質装置に使う圧縮ポンプを開発した。空気用コンプレッサーの技術を応用し、内部の機密性などを高めてガスにも使えるようにした。01年7月にもサンプル集荷を開始するが、サンプル価格は2万円で、流量および昇圧能力がそれぞれ8lit./分および0.02Mpa、13lit./分および0.03Mpaの2タイプを用意する。
(日経産業新聞01年7月5日)
 

11.その他
(1)民間人による南極横断FCキャンペーン
 FCを動力とする乗り物で厳しい環境条件にある南極を横断し、FCの実用性や地球環境保全の重要性をアッピールしようと、十数人のチームが2002年11月から2003年1月にかけ、南極点を経由する2,700kmを踏破する計画を進めている。チーム名は"南極チャレンジ21"で、川崎市の自営業番場健司さんら極地経験のある強者3〜6名が参加の予定。
(産経、東京新聞01年6月26日)

(2)プリウスの販売台数
 ハイブリッド車であるトヨタの"プリウス"は、1997年10月に初めて発表されたが、それ以来売上は予想以上に高調で、01年5月末までに販売された台数は約6万5,000台に達した。2005年には年間30万台の生産規模を予想している。
(読売新聞01年7月7日)

(3)燃料電池用負荷装置
 菊水電子工業は、アメリカの電源関連機器メーカのトランジスタデバイセズから、FCの試験用負荷装置の国内独占販売権を取得した。 水冷の大容量負荷装置および省スペース型空冷負荷装置を扱い、自動車メーカおよび電力・ガス会社などを対象に年間2億円の販売を目標としている。
(日本工業新聞01年7月25日、日刊工業新聞7月26日)

(4)教材用FC
 宝泉(大阪市)は、太陽電池で水を分解して水素と酸素を生成し、それをFCに導入して得られた電気でファンを回す教材用FC実験システムを販売する。 スケルトンタイプで電極での変化が見られるので、FCの動作が分かり安い構造になっている。同社は又メタノールで直接発電するFCセルの販売も始めている。
(電波新聞01年7月25日)

(5)ゼロエミ都市
 荏原は2010年の完成を目標としている"藤沢エコインダストリアルパーク"の概要を纏めた。この事業は同社藤沢事業所53ヘクタールを環境共生型コミュニテイーとするもので、インフラにFC、太陽光発電、ガス化溶融炉などを配備した人口1,300人住工農一体型団地を実現しようとするプロジェクトである。
(日刊工業新聞01年7月31日)
 

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