52号 DM社がDMFC駆動ゴーカートを試作

Arranged by T. HONMA
1.国家的施策
2.地方公共団体での活動
3.PAFC
4.定置式PEFCの開発
5.DMFC
6.FCV最前線
7.自動車以外の移動体用FC
8.燃料関連技術の開発
9.その他

1.国家家的施策
(1)通産省・資源エネルギー庁
 資源エネルギー庁は30日に電力技術懇談会(委員長=正田英介・東京理科大学教授)の第2回会合を開き、東京電力と東京ガスから自由化時代における技術開発についての考え方を聴聞する。マイクロガスタービンや燃料電池などの分散型電源に対する総合エネルギー産業としての取り組みのほか、金融分野など異業種間融合の展望、海外資本との競争などに技術開発面でどう対応していくかが論点になる。エネ庁は今年3月、政府全体の国家産業戦略、通産省の産業技術戦略に対応する電力分野に関する戦略を「電力分野産業技術戦略」としてまとめ、@高効率発電、A新電力供給システム、B地球環境保全の三分野を重点分野に選定、それぞれ2010年、2030年までを展望したロードマップを作成している。同懇談会は、電力技術に関する産官学の有識者を結集して、「電力分野産業技術戦略」の具体的方策を検討している。(電気新聞00年10月18日)

(2) 燃料電池実用化戦略研究会報告書と協議会の発足
 通産省・資源エネルギー庁長官の私的研究会、燃料電池実用化戦略研究会(座長:茅陽一・東大名誉教授)は11月中をめどに報告書を取りまとめる方針である。本研究会は昨年12月発足以来、PEFCを中心としたFCシステムの技術開発、制度環境などの普及基盤整備や2005年頃を目標にした初期導入に向けた支援施策などの検討を進めてきた。これらの課題に基づいて、官民の役割分担を含めた今後の実用化・導入の進め方を提示する考えである。これまでの会合では、国内外の自動車、電機メーカーなどからヒヤリングを行い、技術開発の現状や課題などを確認し、その上で低コスト化・性能向上を図るための技術開発の実施や導入・普及にあたり、必要となる制度環境整備の実施などを主要課題として取り上げた。(電気新聞00年11月2日)
 資源エネルギー庁は、FCVなどの早期実用化を図るため、来年1月にも新たに「燃料電池実用化推進協議会」を発足させる。世界的に高まりをみせている環境対応技術として、FCVなどの実用化を促していく考えである。同庁ではすでに「燃料電池実用化戦略研究会」で、基礎的な研究を進め、FCの改質技術や海外の開発動向、さらには実用化に向けた基準などの整備について検討してきた。特にFCVについては、世界の自動車メーカーが相次いで試作車の走行実験などにしのぎを削っており、同省としても「わが国も基盤を固める段階から、実用化の具体策を詰めていく時期が来た」と判断し、民間企業を後押しする形で、協議会を発足させることにしたもの。協議会へは、自動車メーカーをはじめ、電気、燃料、素材などFCにかかわる産業界全体から参加を募り、一部の専門研究機関や学識経験者も加わる見込み。協議会では、各企業がこれまで蓄積した開発データ、研究成果を持ち寄り、情報公開することにより、課題とされる技術を補完し合い、早期に実用化にこぎ付けることが出来るものと期待している。(日刊自動車新聞00年11月9日)

(3)コークス炉ガスからの水素製造プロジェクト
 通産省は製鉄所のコークス炉から発生するガスを原料にして、効率よく水素を製造する技術開発に2001年度から5年がかりで取り組む。FC用水素燃料を低コストで供給するのことを目的として、製鉄所内で発生する廃熱を製造プロセスに取り込み、従来の水素製造法に比べ大幅なコストダウンを目指す計画である。プロジェクト名は"製鉄プロセス顕熱利用高効率水素製造技術開発"とし、通産省の外郭団体の(財)金属系材料研究開発センター(JRCM)に研究委託する。既に2001年度分の研究費として4.9 億円の予算要求済みで、5年間で23億円程度の総事業費を想定している。
 コークス炉ガス(COG)は水素の他にメタン成分を多く含むので、800℃のCOG自体が有する熱エネルギーに加えて、熱製鉄所内の300℃以下の廃熱をも活用し、メタンから水素を製造する技術開発を行うが、低コスト化のためには酸化反応と水蒸気改質反応を同時進行させる必要があり、高効率の酸素分離技術の開発も合わせて行う予定である。(日刊工業新聞00年10月27日)

(4) ME実用化へ実証プラント建設
 通産省・資源エネルギー庁はジメチールエーテル(DME)実用化に向け2001年度から日産100〜150トン規模の実証プラント建設に着手する。現在実験プラント(日産5トン規模)を設置している太平洋炭砿・釧路鉱業所(北海道釧路市)に建設し、早ければ2002年度から実証運転を行うことを想定している。総事業費は220億円程度と見込まれている。DMEはジーゼルエンジン代替燃料や燃料電池への利用など大きな需要が見込まれることから、実用化を急ぐ方針である。実証試験にはNKK、東京電力、東京ガス、いすゞ自動車などが参加する。尚、DMEは一酸化炭素と水素の合成ガスで液化して貯蔵・輸送も可能である。(日刊工業新聞00年10月31日)
 

2.地方公共団体での活動
(1)滋賀県
 2000年10月、滋賀県、滋賀工業会等が主催する"滋賀環境ビジネスメッセ2000"が滋賀県長浜市で開催された。テーマゾーンでは21世紀のクリーンエネルギーとしてFCを取り上げ、通産省工業技術院大阪工業技術研究所が企業と共同開発したFCVが出品された(電波新聞 00年10月23日、京都新聞 10月24日)

(2)愛知万博でFC実証試験
 トヨタ自動車、中部電力、松下電器、NTT東日本など民間23社は2005年に開催予定の愛知万博において、FC等環境対応型エネルギーや高度道路交通システム(ITS)等次世代技術の実証試験を実施することを決めた。環境対応型エネルギー設備としては、参加各社はFC、ゴミ発電、風力発電等を万博会場やその周辺に設けるが、定置型及び自動車用FC技術や木炭から抽出する成分を活用したバイオマス燃料の導入なども検討している。愛知万博は"環境"がメインテーマである。環境対応型エネルギーを積極的に導入するとともに、ITSによる渋滞緩和による効果も含めて、会場や周辺の2酸化炭素排出量の大幅削減を図ることを目指している。又万博終了後もこれらの施設を恒久施設として残し、会場跡地を環境技術の発信拠点として位置づけ、周辺住宅などへの新エネルギー供給に役立てる計画である。(日本経済新聞00年10月26日)
 

3.PAFC
(1)都市ガス業界
 東京ガス、大阪ガスなど都市ガス業界はPAFCの新規需要開拓を進めている。日本ガス協会FC・水素プロジェクト部長でもある東京ガス研究開発部の笠原晃明氏は「技術的成熟度は商用化レベルにある」としており、これからは普及の段階に入ったとの見方が大勢を占めている。今後、補助率の高い地方自治体向けに普及が期待される。我が国のPAFC導入は70年代から始まり、今年9月末までの実績は201台・容量49,510kWとなった。実用運転性能の基準として耐久性の目標である累積運転時間4万時間は14台が、また信頼性の目標である連続運転時間8,760時間は2台がそれぞれ達成している。今年に入って東京ガスは富士電機の100kW機"FP100E"を慶応大学湘南キャンバスに1台、自社の基礎技術研究所に2台、計3台を導入、又東邦ガスは自社本社に1台導入し運転を開始している。これまでの導入先は各種研究所、大学、病院、化学・タイヤ・自動車など各工場と広範にわたっているが、今後は公共施設や上下水道設備など地方自治体への普及が期待される。設置に際して政府の助成金として、一般企業に対しては導入総費用の3分の1が適用されるが、地方自治体は2分の1と有利な条件となるため、普及に弾みがつくものとみられている。PAFCの課題はコストであり、電池単体で45万〜50万円/kWで、これに工事費などを加えると60万円/kWになる。このため各電機メーカーでは機器・工程の一体化やコンパクト化、素材の選択などを進めており、40万円/kWにまで下げる努力をしている。(化学工業日報00年11月6日)

(2)NTT西日本
 NTT西日本広島支店は自社ビル2カ所に自家発電用FCコージェネレーションシステムを設置、年内にも運転を始める。設備は100kWPAFCで、基町、袋町ビルに各1台ずつ設置する。投資額は2台で8,000万円だが、NEDOの「新エネルギー事業者支援事業」の認定を受けたため、この3分の1が補助金として助成される。両ビルとも自家発電をベース電源に使用し、不足分やバックアップは電力会社からの買電となる。PAFCからの排熱は、ビルの空調や給湯に利用する。電力を全量購入している現行より光熱費を2割程度節減できるという。(日刊工業新聞00年11月6日、中国新聞11月9日)
 

4.定置式PEFCの開発
(1)東京ガス
 東京ガスは熱効率が90%と大形プラント並の性能を発揮するPEFC用燃料処理装置の開発に成功したと発表した。伝熱設計の最適化による効率向上とともに、改質器やCO除去部、蒸気発生器などの各機能をコンパクトに一体化したのが特徴。開発した一体型燃料処理装置は、従来70%台であった熱効率を、発電出力1kWクラスでは世界最高水準の90%にまで高められている。これにより、コージェネレーションの発電効率も35%程度に向上することが見込まれる。装置は、外部保温材を含めた容積が18.8lit.(直径200mmx高さ600mm)と、従来タイプに比べて35%の省スペース化を実現した。また、水素濃度75%と高い水素製造能力を達成し、燃料処理後の残留CO濃度が7ppmと電池スタックの許容値COレベルをクリアーしている。(電気、日刊工業、日経産業、日本工業新聞、化学工業日報00年10月17日)

(2)大阪ガス
 大阪ガスは10月25日、家庭用PEFC用高効率改質装置、改質技術を外部に供与すると発表した。既に三洋電機がこの改質装置を用いた試作機を開発した他、電機メーカなど4社と交渉に入っている。
 大阪ガスは新たに開発した一酸化炭素(CO)除去触媒を使用した高効率天然ガス改質装置を開発、これを組み込んだ1kW級のPEFCコージェネシステムで、従来の公表値を7ポイント上回る37.5 %(LHV)直流発電効率を実証した。同社は改質ガス中のCO濃度を独自のCO除去触媒により、検出下限以下(1ppm未満)まで安定して下げることに成功、これを1kW級のPEFCに組み込んで60回の起動停止を含む500時間の試験運転でこの性能を確認している。今後直流発電効率を同社目標の43%達成に向けて改良を続けるとともに、改質装置の技術を幅広く外部に供与してシステム開発を促進し、2005年に家庭用PEFCコジェネシステムの実現を目指すとしている。(日刊工業、/26,日本工業、日経産業、朝日新聞大阪版00年10月26日)

(3) IHI
 IHIは米国のPEFCシステムの開発会社、モザイク社(イリノイ州デスプレンス)に20%程度の資本参加を行うことを明らかにした。モザイク社のPEFCスタックを導入し、国内向けに5〜20kWの規模の定置型システムを開発する。主にコンビニエンスストアや集合住宅市場をターゲットとし、50万円/kWを当面の目標として開発にあたる計画である。具体的には、モザイク社からスタックを購入、自社のリフォーマー等と組み合わせてシステムとして販売していく戦略を立てている。同社の得意とする高温シフトコンバータ内蔵の平板型水素分離装置の新技術を組み込むことにより、@高い水素透過性能、A大面積・高積層化、Bコンパクト化、の実現が可能であると期待されている。
 今回出資するモザイク社は、GTI(イリノイ州)と米国第2位のガス会社であるナイソース社(インディアナ州)が共同で1999年8月に設立した定置型PEFCの製造を専門とする会社で、GTIの持つ技術の商用化のため、ナイソース社がユーザーの立場から出資して設立したものである。モザイク社はPEFCを自主開発しており、現在、ナイソース社へ3kWのテストプラントを納入し、フィールドテストを実施中である。  また、GTI(Gas Technology Institute)はガスを用いた技術開発・実用化を目的として設立された組織で、IHIとは20年来の友好関係にあり、また、日本の主要なガス会社とも密接な関係がある。
 IHIでは分散型電源技術の開発・商用化を促進する目的で、2000年2月にエネルギーシステム部をスタートさせ、既にマイクロガスタービンの事業化を図っているが、今回のPEFC分野への進出もその一環であり、同技術分野での早期の立ち上げを目指している。(電気、日刊工業新聞00年11月17日)
 

5.DMFC
 ダイムラークライスラーは世界で初めて、バラード社(カナダ)と共同開発したDMFCを搭載したゴーカートの開発に成功した。出力6kWのDMFCで、発電効率は40%%、作動温度は110℃である。DMFCは世界でまだ米ロスアラモス研究所が250Wで効率39%を実現しているに過ぎない。今回、ダイムラーはこれよりはるかに大出力で40%の発電効率を実現した。ポイントとなる電解質にはナフィオン系(デュポン)を使い、触媒の白金量は従来の燃料電池と変わらない。単セルで数千時間の実証運転を終えたと伝えられている。今後、車以外への展開も可能で、メタノール使用FCの開発をターゲットとする同社にとって第2世代となるDMFCの開発は、世界の自動車業界に大きなインパクトを与えそうである。(日刊工業新聞00年11月10日)
 
6.FCV最前線
(1)米ゼネラルモーターズ
 米国GMは、シドニーオリピックのマラソン競技の先導車として活躍した液体水素燃料電池自動車"ハイドロジェン・ワン"を17日から20日まで北京で展示する。アジアでは初の展示となり、将来大きな需要が見込める中国でPRすることにした。オペルの"ザフィーラ"をベースに開発した完全な無公害車である。純水素で作動するPEFCユニットから発生する電気で3段階式電気モーターを駆動して推進。電気モーター出力は55kW、最高時速は140km/h、航続距離は約400km、5人乗りで重量は157kg。 関係者は「中国でガソリン車が先進国並に普及したら、環境に与える影響は甚大で、環境対策への配慮が重要である」と語っている。GMは2日、カリフォルニア州サクラメント市で液体水素FCV"ハイドロジェン1"のテスト走行を"カリフォルニア・フーエルセル・パートナーシップ"の本部開所式に合わせて実施した。(日本工業新聞00年10月17日、朝日新聞10月21日、日刊自動車新聞11月4日)

(2)トヨタ自動車
 トヨタ自動車は、米カリフォルニア州で行うFCVの共同実験"カリフォルニア・フューエルセル・パートナーシップ"に参加する。11月1日にサクラメント市に燃料電池自動車のサービスセンター兼ショールームを開設する。米GMも又参加を表明した。トヨタは96年に水素吸蔵合金に貯蔵した水素を燃料とするFCVを発表し、97年にメタノール改質器を搭載したFCVを世界で初めて公表したほか、99年にはGMとFC技術開発で協力関係を結んだ。共同実験では2003年までに、数十台のFCVを路上走行させる予定になっている。トヨタは「燃料自動車の普及に向けて、燃料選択や基準づくり、インフラに関する議論をよりオープンかつグローバルに行うことが可能になると考えて参加を決定した」と語っている。(中日、日刊自動車、日経産業、日刊工業、日本経済、読売新聞00年10月18日、日本工業、朝日新聞10月19日)

(3)日産FCV開発を強化
 日産自動車は業績回復に伴い、得られた経営資源を活用し、資本提携しているルノーと協力して燃料電池を今後5年間に集中的に開発する方針である。両社合わせて、この計画に850億円の開発費と300人のエンジニアを投入する。(日経産業、日刊工業、毎日、日刊自動車新聞00年10月31日)

(4)アメリカでFCVの公道実証テスト
 カリフォルニア州でFCVが公道で実証走行するカリフォルニアパートナーシップが11月1日にキックオフする。カリフォルニアエアリソーシズ(大気資源管理機構)とカリフォルニアエネルギー委員会が共催で実施する世界で初めてのFCVによる3年間の走行テストである。ダイムラークライスラー、フォルクスワーゲン、フォード、本田技研工業、日産自動車、現代自動車、ジェネラル・モーターズ、トヨタ自動車が参加する。最初は圧縮水素を燃料にした乗用車とバスでのFCVの走行である。FCVの問題点である燃料で、炭化水素系燃料を改質して水素を生成するか、水素を直接使うか、一連の実証でそのいずれかの優劣の答えが引き出せると期待されている。(日刊工業新聞00年10月30日)
 GM、本田技研、日産など自動車メーカー7社は1日(現地時間)、サクラメント市でFCVの走行実験を開始した。一般公道を使った走行実験で初日は7社のFCVが4時間のデモ走行を実施したが、本田技研は新たに開発した試作車"FCX−V3"で4時間無事に完走したと伝えられている。トヨタを含む8社は2001年末までに走行実験を実施する予定。(日経産業新聞00年11月6日)

(5)三菱自動車
 三菱重工業と三菱自動車工業はFCの開発で、ダイムラークライスラーと提携する。年明けにも首脳会談が持たれ、正式合意する見通し。3社は1,000億円を超える開発費を分担し、4〜5年以内に小型で軽量のFCを共同で開発、それを搭載した自動車を量産する。FCVの開発ではトヨタ自動車とGM、仏ルノーと日産自動車がそれぞれ提携している。独ダイムラークライスラーは既に米フォードモーターとFCV連合を組んでいるが、これに三菱グループを加えることで、規格が統一されていない規格標準化を巡る主導権争いを有利に進めようとしているとの見方もある。今回の提携はダイムラークライスラーによる三菱自動車への34%出資が発端で、両者の資本提携がグループにも波及した形である。ダイムラークライスラーはかねた三菱自動車以外の三菱グループ企業との提携を模索しており、今後、広範なグループ提携に発展する可能性が考えられる。(日本経済新聞00年11月7日)

(6)ダイムラークライスラー
 ダイムラークライスラーは7日、新型のFCV試作車2モデルを発表した。提携交渉を進める三菱重工業や三菱自動車工業と同じメタノールを改質する方式を採用した。シュレンプ会長は「量産化前の最後の試作車」と述べ、メタノール方式を最優先して商品化する考えを表明した。ガソリン改質方式を推す米ゼネラルモーターズとの違いが鮮明になり、一見すると燃料供給方式の標準化を巡る自動車業界内での競争のようであるが、このような動きはエネルギー業界や国家を巻き込んだ覇権争いに発展しそうである。同社が発表したのは小型車Aクラスをベースとした"NECAR-5"および多目的車の"ジープ・コマンダー2"を改造した2モデルである。従来の試作車に比べ、連続走行距離を100〜200km延長する一方、メタノール改質装置などの小型化により車体重量を300kg軽くした。今後は開発の重点をメタノール方式に置き、10億ユーロ(1ユーロ=約93円)を投じて2002年には大型バスを、2004年には小型乗用車を順次商品化する予定である。同社は2020年時点の新車販売に占めるFCVの比率について、商用車で40%以上、乗用車で2桁との見通しを示した。日本でも2001年早々に日石三菱の精油所での走行実証にNECAR-5を持ち込み、フォードの燃料電池車と一緒にデモ走行する見込みである。(日本経済新聞00年11月8日、日経産業・日刊工業新聞11月9日)
 

7.自動車以外の移動体用FC
(1)鉄道総合技術研究所

 財団法人鉄道総合技術研究所(東京都国分寺市)は、ディーゼルカーに替わって、無公害かつ静かで、コストの安いFCを搭載した未来型鉄道の開発を進めている。同研究所内でこのほど公開された模型車両は、縦横30cm程度の箱形1kW級FCおよび水素、酸素のボンベを積んだ機関車が、2両の客車に大人10人を乗せ、約30mのミニレールを快走した。もしFC電車が実現すれば、電線を張り巡らせる必要がなく、現在気動車が走っているローカル線や路面電車で採用される可能性が大きいと期待されている。2010年の実用化を目指している。(東京新聞00年10月18日)

(2)世界初のFC機関車
 鉱山や地下鉄に利用できる世界初の燃料電池機関車が、10月9〜12日に米国ネバダ州ラスベガスで開催されたthe MINExpo INTERNATIONAL 2000で公開された。この鉱山展示会は4年に一度開催され、世界でも最も重要な展示会とされている。車両はRA Warren Equipment が、FC部分はSanda National Laboratoriesが開発し、全体組み立てはAtlas Copco Wagnerが担当した。このプロジェクトには20の partnersが参加しており、Fuelcell Propulsion Instituteがコーディネートしている。(The News letter of HyWeb and the German Hydrogen Association(DWV) 4th Quarter 2000)
 

8.燃料関連技術の開発
(1)三菱化工機
 三菱化工機の水素製造装置事業に拍車が掛かってきた。小型オンサイト型では、LPGを原料とした装置が今週中にも半導体工場向けに第1、第2号機としての受注が決まるほか、中型装置も近く3系列を受注できる見通しである。原料面でも都市ガスやLPG、ナフサに加え、灯油を視野に入れた装置開発を進めており、原料多様化により広範な顧客に対応できる体制を整える。得意とする水素製造技術を生かしてFC分野に市場展開する予定である。(化学工業日報00年10月17日)

(2)広島大、マツダ等 
 広島大、マツダ及び広島県立西部工業技術センターの共同研究グループは100℃以下の低温で多量の水素を吸蔵・放出出来る金属薄膜の開発に世界で始めて成功したと発表した。250℃以上の高温で水素を放出するマグネシウム膜を、100℃以下で吸・放出するが吸蔵量は少ないパラジウム膜で覆い、金属をナノメートル単位に隙間なく張り合わせることにより、今まで困難視されていた低温でかつ多量の水素を吸・放出できる物質を合成した。実験では1気圧、100℃において、吸蔵物質100g当たり6gの水素を吸蔵し、真空中90℃で水素を放出することを確認した。今までに実用化されている吸蔵合金に比べ、水素吸蔵量は3〜4倍の値を示したことになる。今後はバナジウムなど安価な金属でコストを下げ、量産可能な加工法を研究することにより、これの実用化を目指したいと研究者は語っている。(中国新聞00年11月15日、化学工業日報11月17日)

(3)北大、積水化学等
 北海道大学、積水化学工業及び電制はジェット燃料の添加剤であるデカリンから水素を取り出す技術を開発した。この新技術はメタノールやガソリンを使う従来の燃料電池用水素製造法に比べ10倍の速度で水素が得られ、装置も小型化できる。2001年春から実証試験によって実用性を確かめる計画である。デカリンは天然ガスから作る液体で、北大の市川教授らが開発した白金を主成分とした触媒で反応させると毎分約100lit.の水素が発生する。反応温度は300〜350℃で、装置の大きさは試作段階でもlit.程度であり、改良によってより小型化出来ると予想している。(日本工業新聞00年11月11日)
 

9.その他
(1)セラニーズ社
 セラニーズ社はこの程、本田技研工業と新しいFCの開発に着手した。近く共同開発の詳細を明らかにする。同社では、新製品の開発や原料転換で技術革新を強化していく方針を打ち出しており、本田との共同開発はこの一環。セラニーズ社では石油系原料依存からの脱却も長期的な技術方針として明らかにしており、米国のバイオテクノロジー企業と提携してバイオ技術ベースの原料開発に取り組むことを決めている。(化学工業日報00年10月18日)

(2)ユニチカ
 ユニチカは燃料電池用セパレータを、早ければ2002〜3年にも月産枚数1万オーダーで量産を始めると発表した。FCの実用化では低コスト化が課題となっており、同社のセパレータは射出成形のため製造コストが低いうえ、量産すればさらにコストが低減し、現在のサンプル価格を1桁下げることができると期待している。セパレータは特殊フェノール樹脂"ユニベックス"から製造するアモルファスカーボン構造物。この樹脂は数μmの真球状で粒径分布が密なため、表裏で異なる複雑なパターン設計を施しても1回の射出成形で製造でき、量産メリットが大きい。これを1000℃で焼成してセパレータに仕上げる。ユニチカは宇治工場に量産向け設備を設け、日本の自動車や電機メーカー、米国の燃料電池メーカーなどへ1社当たり数百枚規模でサンプル供給し、評価している段階にある。これと並行して金型改良や射出条件の調整などで歩留まり向上を進めるなど商業量産体制の確立を進めている。(日刊工業済新聞00年11月8日)

(3)大同メタル
 大同メタル工業は米国DCHテクノロジー社(カリフォルニア州)の100%子会社であるエネイブル・フュエル・セル・コーポレーションとの折半出資で、FC事業合弁会社"ニューウエーブ"を設立した。本社は大同メタル内に置き、当面は大同メタルの犬山事業所で既存設備を活用してFCの生産にあたる計画である。合弁会社は小型FCを来春から販売、2003年度には10億円、2005年度には100億円の売り上げを目指すと述べている。FCの事業化には大同メタルの金属接合・精密加工技術が応用できるとしてこれをDCH側に打診、日本での本格展開にこぎつけたという。(日刊工業、中日新聞00年11月16日)

(4)日本石油ガス
 日石三菱の全額出資会社の日本石油ガスはLPGを燃料とする小型分散型電源事業に本格参入する。2001年度からLPG仕様のマイクロガスタービン(MGT)と小型FCによるコージェネシステムの実証試験に着手し、MGTは2002年の、小型FCは2005年の実用化を目指す。又FCに関してはPEFCを2001年度から国内の家電メーカーと共同でLPG仕様の開発に乗り出す。一般家庭向けの1kW級のシステムに対応する小型水素供給装置を開発し、2005年までの実用化につなげたいとしている。(日刊工業新聞00年11月16日)
 


 
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