50号 *Sydney OlympicでFCVがマラソンを先導

Arranged by T. HONMA
1.国家的施策
2.企業動向
3.PAFCの市場展開
4.SOFC開発成果
5.PEFC技術と新しい展開
6.定置式コジェネレーション用PEFC
7.家庭用PEFC
8.FCV最前線
9.改質技術
10.燃料に関する展開
11.その他のFC関連技術の開発

1.国家家的施策
  (1)通産省・資源エネルギー庁
 石油審議会の天然ガス小委員会は、2000年9月1日に初会合を開き、天然ガスの利用拡大に対する支援策を検討することにした。天然ガスを燃料とするFC、マイクロガスタービン等小型電源開発の技術支援やパイプライン建設の規制緩和、更に欧米に比べて割高な液化天然ガス(LNG)の輸入価格抑制策について、年内を目途に方針を纏める予定。(朝日新聞00年9月2日、日本経済新聞9月4日)
 通産省は2001年早々にも民間企業を集結し、燃料電池実用化推進協議会を設立する方針を固めた。11月末にまとめるPEFC実用化に向けた戦略研究会の検討結果を踏まえ、実用化推進協議会でFC普及にあたっての具体的な燃料の選択や実用化に向けての各種規制の緩和、標準化などを検討していく。新エネルギー財団が事務局となってスタートする予定である。今年度からNEDOが補助事業として5年間をかけて進めるFCの実用化への各種プロジェクトと併行した形で、民間の意見を集約するとともに、問題点を洗い出して、自動車・定置形の両市場での普及促進を図ることにしている。(日刊工業新聞00年9月4日、読売新聞同9月17日)
 通産省は2001年度からLPガスによるPEFCの開発を進めることになり、2001年度LPガス産業予算の中に、新規に2億7400万円を要求した。家庭用1kWシステムを2005年度までの5カ年計画で開発する。(化学工業日報00年9月5日)
 通産省は2001年6月を目途に、家畜し尿、生ゴミ等の有機性廃棄物や植物から取り出すバイオマスを燃料にして、エネルギー回収効率の高い新技術を民間企業などから一般公募し、それらに総額20億円の補助金を交付する。公募ではFCのエネルギ―源である水素生成技術も対象となる。エネルギー回収効率の目安としては、現在一部で実用化されているバイオマスからメタンを精製して得られるときのエネルギー回収効率50%を基準に、それを越えるものが対象になる見通しである。期待される1つの技術は"水素・メタン2段発酵技術"で、それは有機性廃棄物から第1段階で水素発酵菌により水素を生成、更にその廃液にメタン発酵菌を加えてメタンを精製する方式であり、エネルギー効率は60%を越えると期待されている。それ以外に200℃以上の高温と高圧化で有機性廃棄物を熱分解し、メチル系の生成物を発生させる"超臨界流体転換技術"も有効な技術として挙げられている。現行のメタン精製方式が、40lit.の排水ベースで1日を要したのに対して、この技術を使えば数秒で終えることが可能になる。(日本工業新聞00年9月5日)
通産省は、2001年度から燃料電池燃料となる水素を製鉄所のコークス炉排ガスから取り出す技術開発に乗り出すことにした。研究開発は通産省所管の金属系材料研究開発センター(JRCM)と製鉄会社に委託、5年後の実用化を目指す。この技術を全国の製鉄所に導入すると、推定40億m3の水素が外販できるとし、FCの普及にも有効と考えられる。今回開発する技術はまず、COGが持つ熱と製鉄所内で発生する廃熱の利用して、コークル炉ガス(COG)に含まれるメタンガスなどから、化学反応により良質な水素を生成する。一方、酸素については、酸素イオンだけを通過させる膜材料を廉価に提供する技術を開発することにしている。2004年には家庭用FCシステムが登場するなど、FC市場の急成長が見込まれるだけに、コークス炉はFC用燃料の新たな供給源として注目される。又鉄鋼業界は国内総エネルギーの約11%(産業部門の24%)を消費、その約40%を廃熱として放散しており、エネルギー有効利用にもつながることになる。(日本工業新聞00年9月29日)
(2)工技院
 工技院は2001年度のエネルギー・環境分野の産業技術開発重点施策と概算要求内容を纏めた。概算要求額は515億6700万円で、2000年度に比べて2.4%の減になっている。総合的な研究開発では、FC、水素エネルギー、超電導、風力エネルギーの技術開発予算を増額させている。(化学工業日報00年9月5日)
(3)NEDO
NEDOは、PEFC型水電解設備と天然ガス改質型の2タイプによる水素ステーションの開発を、当初の予定よりも1年半前倒しして、実証試験設備を2001年末に完成させることにした。PEM型電解設備については日本酸素が、天然ガス改質型については岩谷産業が取りまとめる。カリフォルニア州でのFCV公道走行試験カリフォルニアパートナーシップは2000年秋から始まるが、日本でもこれらの水素ステーションによるFCV公道試験ジャパン・パ−トナーシップが立ち上がることになる。
 天然ガス改質型は、目下アメリカのラスベガスとパームスプリングで計画中であるが、PEM電解プラントはまだ世界に例が無い。PEFCの心臓部は三菱重工が、水素吸蔵合金は日本製鋼所が担当する。夜間の系統電力を使って水を電解し、水素は水素吸蔵合金に蓄えるが、PEM電解槽の電極面積は1,000cm2、セル数は50で、これにより30Nm3/hrの水素供給能力を持つことになる。これは1日300台の車に燃料を供給する実用スタンドに対しては10分の1の規模である。設置場所は、水電解プラントについては高松市の四国総合研究所構内で、車搭載圧力が35MPaに対応した高圧供給設備を設けることになっている。
天然ガス改質型は、改質装置・精製装置を大阪ガスが導入し、用地も同社の構内が予定されている。ただ水素を蓄える水素吸蔵合金については、日本重化学工業が担当する。
 実証運転では、FCVをそれぞれのステーションに2台ずつ持ち込み、公道走行は2年半続けられることになっている。30Nm3の水素を充填したFCVは、380km走行可能と見積もられており、2003年までの実証運転を通してFCV普及のためのインフラ整備のあり方も検討していく予定になっている。(日刊工業新聞00年8月9日)
 NEDOは、PEFCシステムの実用化技術開発事業をスタートさせた。国が開発費用の半分を補助し、12のテーマについて、向こう5年間をかけて取り組む。2004年にはある程度の普及を目指しており、これまでの研究開発から実用化の段階へとフェーズを格上げすることになる。
提案テーマは以下のとおり;アドバンスドFC電源システム実用化技術の開発(日立製作所)、PEFCプラントの量産化技術開発(東芝)、PEFCを用いる高効率コジェネレーションシステムの低コスト化技術開発(松下電器産業)、少量白金系触媒担持ガス拡散電極の実用化技術の開発(日本電池)、低コストFC量産化技術開発(三洋電機)、MEA量産基本技術開発(旭硝子)、PEFC本体セパレーター用ステンレス材料の開発(住友金属工業)、小形改質器、パワーコンディショナーの実用化技術開発(松下電工)、PSA方式による新水素製造システムの開発(日本ガス協会)、水素分離形リフォーマーシステムの開発(日本ガス協会)、PEFC用流量制御形ガス昇圧器の開発(長野計器)、PEFCの出力の有効利用技術の開発・実証(日本ガス協会)(日刊工業新聞00年9月7日)

 
2.企業動向
 東芝は米国IFC社とFC事業に関する合弁会社を設立することで基本合意したと発表した。新会社は従業員数約100名で、2001年4月に設立予定。社名、資本金は未定であるが、出資比率は東芝51%、IFC49%である。新会社は東芝のPAFC及びPEFC事業を分離、移管して日本国内に設立し、住宅用・オンサイト用PEFC、オンサイト用200kW級PAFCの夫々について、開発、製造、販売、保守サービスを行う。特に、住宅用・オンサイト用PEFCについては東芝とIFCの資源を集中し、効率的な開発を行い、2004年にも商用機の市場投入を実現する予定である。なお、新会社はIFCとは相互に製品や部品を供給し合うことになっている。日本を中心にしたアジア地域を主な販売地域にする。(日本経済、日経産業、電気、日本工業、日刊工業、電波、読売新聞、化学工業日報00年9月20日)
 
3.PAFCの市場展開
 日石三菱のLPガス関連会社、日本石油ガスはLPガス仕様のFC(LFC)の需要開拓を始めることになった。日石ガスは、ONSI製PAFCによって、LPガス仕様FCの商用化開発を、東芝と共同で進めてきた。これまでの実証試験などの結果から、同社はそれが商用化のレベルに達したと判断し、需要開拓に踏み切ったようである。販売するのは、200kWPC25Cで、発電効率は39%、排熱回収効率41%、総合効率80%で、環境面ではNOxが5ppm以下、SOxやばいじんの排出はゼロで、騒音も65デシベル以下である。病院、ホテル、防災センターなどでのコジェネレーション用電源として売り込みたいとしている。(化学工業日報00年8月17日)
 
4.SOFC開発成果
  (1)中部電力と三菱重工業
中部電力と三菱重工業は共同で出力25kW級連結積層T−MOLB型SOFCユニットの運転試験を開始した。両社は98年に0.35W/sq.cmの世界最高の出力密度を持つ基本ブロックを開発し、このブロックを2つ連結した2kWユニットを作成、それによる実証実験を既に終えている。今回はこのブロックを更に数十個組み合わせたもので、耐久性や出力の安定性を確認することに主眼が置かれている。(日刊工業新聞00年8月7日)
 中部電力は2000年9月12日、上記T−MOLB型SOFCの発電試験をスタートさせたが、これまでに世界最高の出力15kWの発電に成功し、更に順調に発電を続けていると発表した。今回のプラントは、縦横20cm、厚さ4.3cmのセルを10体連結し、それを3つ束ねた構造になっている。シール材にはガラスに替えて高密度セラミックスを採用し、又電池と電池をつなぐ接続板の厚さを2mmから1mmに圧縮して電気抵抗を減らすなど、耐久性や性能を向上させるための工夫が凝らされている。又電解質を凹凸の形状にすることにより、電池サイズを圧縮するとともに、電池をブロックとして作るため、大量生産とコストダウンが実現できる構造となっている。同社は「これまでのところ性能劣化は観測されておらず、更に1,000時間運転した段階で出力を高めていきたい」と述べ、又将来的には分散型小型電源としての応用も視野に入れながら、火力発電に替わり得る大型電源としての実用化を図っていく予定である。(電気、日本工業、日刊工業新聞00年9月12日)
(2)電力中央研究所
 電力中央研究所は火力代替電源として開発を進めている支持膜平板型SOFCについて、1.3〜1.4 W/cm2 と、従来の3倍以上の出力密度の向上に成功した。長時間の発電試験では安定した出力特性が得られ、劣化もなく、優れた特性を有している。また一方では、低コストの電解質膜製造法(スラリーコート法)を確立し、材料コストも1万円/kWと、大幅なコスト低減の見通しが得られている。
 電中研では年内にも今回開発した単セル3枚を積層し、50〜60W程度のスタックを製作する計画である。基本的な性能試験を開始することにより高積層化や大面積化に結びつく技術開発を進めたいとしている。(9月12日 電気新聞)
 
5.PEFC技術と新しい展開
  (1) 日本電池
 日本電池はPEFCの単セルベースで、触媒の白金使用量を大幅に減らす技術を開発し、又白金のCOによる被毒の問題も克服したと発表した。2002年までに白金触媒の量を現在の10分の1に減らした超少量白金系合金担持触媒と多孔性ポリマーを電極に用いた高性能の家庭用1kWPEFCスタックを製作する。これにより大幅なコストダウンについて技術的目途をつけたいと同社は語っている。具体的には、先ず触媒層については、カーボンとイオン交換膜を溶液状にして混合し、カーボンの表面に膜が形成されるように処理して、この膜の孔に溶液状の白金とルテニウムを200℃の温度で還元する。その結果白金とルテニウムが1個ずつの粒子として合金となり、それが電子伝導体の境界面に偏在するというプロセスである。この方法で担持した白金は100%有効に利用されることになり、その使用量を大幅に減少させることができた。又COによる触媒被毒の問題は、ルテニウムの防止効果により克服されている。この電極で5cm角の単セルを製作し、それによって0.7Vの電圧を観測した。今後はNEDOからの資金を含めて、2年間で5億円以上の資金を投入し、2002年までに1kWのスタックを完成させる予定である。(日刊工業新聞00年9月5日)
(2)Proton Energy System Inc.(USA)
 Proton Energy System Inc.(USA)は、必要に応じて、電気を水素へ、水素を電気に可逆的に転換するユニークな再生型燃料電池システム"UNIGENTM"の開発を行っている。この燃料電池システムはエネルギーを、非常電源および保障電源に理想的な、利用度の高い形で貯蔵する可能性を有している。大型化して従来型バッテリーより価格的に有利にすることが期待される。(Proton Energy System, web site as of Sept.11. at www.protonenergy.com)
(3)大同メタル
 大同メタル工業は米国DHCテクノロジー社(カリフォルニア州バレンシア)とアジア地区におけるFC事業の合弁会社を日本国内に設立することで合意した。これに伴い、大同メタルは年内にも新たにFCの生産工場を新設し、2001年4月には量産体制を確保する。DHC社はPEFC、水素ガスセンサーなどを開発しているベンチャー企業。合弁で事業化しるのは1〜50Wの小形ポータブルタイプのもので、照明器具、通信、コンピューター機器などの需要が期待されている。大同メタルが生産を担当し、合弁会社で販売する。初年度2万台を出荷し売上高10億円、2005年には同100億円を見込む。(日刊工業新聞00年9月25日)
 
6.定置式コジェネレーション用PEFC
(1)荏原製作所
荏原はカナダの燃料電池ベンチャー、バラードパワーシステムズ社の子会社バラードジェネレーションシステムズ社(BGS社)への出資比率を5%から10%に引き上げた。株式取得費用は約20億円。同社はBGS社と共同で定置式PEFCの実用化を進めているが、今回の提携強化を機に、同じくバラードとの合弁会社である荏原バラード社を核にして開発を加速する。荏原は同社藤沢工場に燃料電池組み立ての専用工場を確保し、まず、1kW級8基の製作に入るとともに、2基の250kW機を今年度中に導入する。  小型の1W機は東京ガスと共同で進めている開発計画を本格化するもので、東京ガスが開発した水素改質器を使用した家庭用コージェネシステムの実用化をはかり、今年度中に8基を完成、実証機として国内に導入する計画である。  一方、250kW機の1機目は9月24日にNTT通信エネルギー研究所(東京都武蔵野市)に設置。同社が開発した低温吸収式冷凍機と併設して天然ガスによるコジェネシステムの実証を今後2年間かけて行う。  2基目は来春までに北海道苫小牧市の下水処理場において下水汚泥から発生するメタンガスを燃料として使用するものであり、実用規模での廃棄物燃料による世界初のPEFC発電プラントを実現することとなる。(9月13日 日刊工業新聞,9月14日 日経産業新聞)
 
7.家庭用PEFC
(1)東京ガス
 東京ガスは、PEFCと独自の燃料処理装置を組み合わせた"家庭用コジェネレーション"の実証試験を進めているが、2001年度から大規模なフィールドテストに着手し、2004年度での商品化に目途をつけたいと述べている。フィールドテストの内容は未定であるが、1kWの発電規模で、一般家庭十数戸の規模になる見通しである。FCコジェネレーション導入による効果は、火力発電所から供給される電力と都市ガスによる給湯器を組み合わせた従来方式に比べて、1次エネルギー消費量で20%、CO2排出量で24%、NOx排出量で56%の削減になる。又経済的には光熱費が19%節約できると期待されている。フィールドテストでは上記の導入効果を立証するとともに、小型軽量化、コストダウンの可能性を追求することにしている。価格については、給湯器の価格(35万円)にプラス15万円の50万円がターゲットとして考えられている。(日本工業新聞00年8月22日)
(2)コロナ
 燃料電池を活用した暖房・給湯システムの開発に取り組んでいるコロナは、新潟大学工学部と同システムの実用化に向けた共同研究を開始した。共同研究の中心は、改質装置でありコロナは灯油からの改質を目指している。工学部は主にシステム全体と、改質触媒について担当する。コロナが取り組むシステムは家庭用コージェネレーション(熱電併給)システム。今年2月から米国企業との共同開発に着手し、実用化のめどは2003年。同社の住宅設備事業の柱と位置づけている。(新潟日報00年9月7日)
(3)出光・松下電工
 出光興産と松下電工は、LPG(液化石油ガス)を燃料とする家庭用PEFCコージェネレーションシステムを共同開発する。製品化を前提にしたシステムを本年末までに開発し、2001年1月から実証試験を開始し、2004年に1kWの商品化を目指しており、その価格は30万円程度を見込んでいる。このシステムは松下電工の1kW家庭用PEFCに出光興産が独自開発した酸化触媒によるLPG改質装置を組み合わせたものである。2001年1月からの実証試験では、発電効率、発電電力の安定性、廃熱回収効率などの基本性能のほか、排ガス量、騒音、振動などの環境特性を評価する。なお、家庭用FCでは都市ガスや灯油を燃料とするシステムの開発が先行しているが、両社は国内ではLPG仕様の需要も大きいと見ている。(日本工業新聞、日刊工業新聞、化学工業日報00年9月21日)
(4)北海道電力
 北海道電力は9月25日、コージェネレーション向けに灯油を燃料にしたマイクロガスタービン(MGT、出力28kW)と、PEFC(同3kW)の実証試験を始めると発表した。PEFCの実証試験は同社総合研究所(江別市)において、約6,500万円をかけて、2001年1月から2003年3月まで続ける。PEFCは米国Hパワー社製である。燃料はLPGで、60℃の温水を取り出す家庭用コージェネレーションシステムとなっている。基本性能評価として発電・排熱・環境特性、系統連携試験を実施。さらに実用化の評価として熱回収率、燃料改質器の性能などを検証する。(電気新聞、北海道新聞00年9月26日)
 
8.FCV最前線
  (1)Ballard
 Ballard Power SystemsとXCELLSIS Fuel Cell Engines Inc.が、バンクーバーで実施してきた3台のFCバスによる実証運転を完了したと発表した。過去2年間の実証運転期間に、このバスは67,000km走行し、運賃を支払って乗車した乗客の数は、11万人に達した。以前に行ったシカゴ市での実証運転と同様、乗客を満足させるものであり、他方市当局はFCエンジンの開発に重要な役割を果たしたことを誇りに思うと述べている。又BallardのFiroz Rasul会長は「バンクーバー市当局と運行を受け持ったTransLinkの協力により、FCバスの実用性を世界に示すことが出来た」と語っている。今後プロジェクトの舞台はCalifornia州に移すことになる。EXCELLSISのDr.Ferdinand Panik社長は、California Fuel Cell Partnershipの基で、今後2年間に25台のバスが同州に提供されることになり、幾つかの交通機関がこのプロジェクトに参加する予定である。
 これとは別に、日本の荏原製作所は、定置式PEFCの開発を手がけるBallard Generation Systemに対してUS$1,900万の投資を追加することになり、株式の比率を6%から11.4%にまで高めた。
(Hydrogen & Fuel Cell Letter, August 2000 XV/No.8, pp6-7)
(2)欧州およびカナダ
 メタノールベースの燃料電池車の評価・普及促進を目的として、欧州、カナダの有力6社が結束する協定を結んだ。調印メンバーは、独 ダイムラークライスラー、英 BPインターナショナル、独 BASF、カナダのメタネックス、ノルウェーのスタイトル、及び独XCELLISの各社。協定の主眼は安全性、環境性及びインフラストラクチャーに関する総合的調査を行い、メタノール燃料電池車の燃料に関する共通の立場を確立することにある。(日刊自動車新聞00年9月14日)
(3)シドニーマラソンの先導車にFCV
 米国GM傘下の独アダム・オペルが開発したFCVが、シドニーオリンピックでマラソン競技の先導車に決定した。このFCVは、オペルのコンパクトミニバン"ザフィーラ"をベースに開発した"HydroGen-1"で、燃料となる液体水素を75lit.のタンクに零下253℃で保存する。駆動モーター出力は55kW、最高時速140km、連続走行距離約400kmである。(日刊自動車新聞00年9月16日、日本工業新聞同9月18日)
(4)メタノールFCVの共同研究
 独BASF、英BPインターナショナル社、独ダイムラー・クライスラー、カナダのメタネックス、ノルウエーのスタトオイル及び独エクセルシスの6社は、メタノールFCVの実用化と市場導入に向けた共同調査・研究の業務提携を結んだ。提携の目的はメタノールFCVの市場導入と使用に伴う健康・安全・環境面への影響や、インフラ整備などの問題を分析調査するものであり、そのうえで共同体制を構築する計画である。(化学工業日報00年9月20日、日刊工業新聞同年9月22日)
(5)本田技研
 本田技研工業は2000年9月28日、FCVのプロトタイプ3号機となる"FCX-V3"を開発したと発表した。11月にカリフォルニア州でスタートする官民共同のFCV公道テスト"CaFCP"(カリフォルニア・フューエルセル・パートナーシップ)に同モデル複数台で参加、"極秘"の超低公害車の実用化に向けたデータを収集する。高圧水素を燃料とするFCVで、制御ユニットやモーターを小型化して4人乗りを可能にしたほか、始動時間を大幅に短縮してガソリン車に匹敵する利便性を確保した。FCX-V3は、従来のFCVと同様に電気自動車"EVプラス"の車体骨格を流用した。その上で電装コンポーネントを65%、モーターを21%それぞれ小型化して、乗車定員を2人から4人に拡大した。蓄電装置はニッケル水素バッテリーから瞬時の大電流放電が可能なウルトラキャパシタ(大容量コンデンサー)に転換、運転特性を高めた。燃料タンクはCNG(圧縮天然ガス)車"シビックCNG"の採用するカーボンコンポジット製の改良型とした。これにより水素吸蔵合金型で10分以上かかった始動時間を10秒へと大幅に短縮し、燃料の充填時間も20分から5分に短縮された。最高時速は130km/h、航続距離は180km(LA4モード)、燃料タンク容量は100lit.(250気圧)。PEFCは当面カナダのバラード社製とするが、CaFCPには独自タイプの搭載車も投入する計画である。又、「CaFCPではFCVの将来のインフラ整備について協議・検討する」と述べている。本田は2003年にFCV市販車の具体化を目指している。(日刊自動車新聞、日経産業新聞、日本工業新聞、日刊工業新聞、東京新聞、産経新聞、日本経済新聞、朝日新聞00年9月29日朝刊)
 
9.改質技術
 出光興産は、石油製品の改質プロセスで発生するCO濃度を、従来の2万分の1になるppmまで抑制させる技術を開発した。技術的には、先ず改質反応で発生したCOに、霧状の水と酸素を吹き付け、CO濃度を5,000ppmまで下げた後、ルテニウム系合金を触媒とするシフト反応で10ppmまでCO濃度を引き下げるという手法である。ガソリンの改質技術に寄与すると思われる。(日経産業新聞00年9月6日)
 
10.燃料に関する展開 国際DME(ジメチルエーテル)フォーラムは9月4日、設立総会を開き、藤本薫・東大教授を会長に選出するとともに、今年度の活動方針などを決めた。同フォーラムは自動車、FC、火力ボイラー向けの低コスト、低環境負荷の新燃料として休息に関心が高まるDMEの国際的な普及啓蒙を目指し、産学共同で組織。会員には、大阪ガス、電源開発、日本鋼管をはじめプラントメーカー、商社など47社・団体と大学教授・研究者ら24人が参加してスタートした。同フォーラムの活動は伊藤忠商事、大阪ガス、石炭利用総合センター(CCUJ)、電源開発、日本鋼管、日立製作所、三菱重工業など15社・団体で構成する理事会が中心となって進められる。(電気新聞00年9月6日)
  11.その他のFC関連技術の開発 (1)京都大学
 京大大学院農学研究科の池田篤治教授、加納健司助教授らは、白金の替わりに酵素や細菌を触媒に利用する生物燃料電池の実用化にめどをつけた。従来のFCと同等の電圧・電流を実現できる可能性があるという。池田教授らは、血液の試薬に使われるピリルピンオキシダーゼや硫酸還元菌を用いて生物FCを組み立て、性能を測定したところ、約1Vの電圧と数mA/cm2の電流密度を達成した。現在は繊維に酵素や菌を固定しているので電流密度が小さいが、繊維密度を縦横10倍ずつ高めれば、従来の白金触媒並の性能が得られる見通しが立った。生物FCは常温で中性の液体での反応が可能になり、燃料もバイオガスなどが使えるため新たな用途が期待できる。今後、耐久性についての性能評価を行う予定。研究成果は、26日から岡山大学で開催される日本分析化学会の年会で27日に発表される。(日本工業新聞00年9月25日)
(2)化学技術戦略推進機構
 化学技術戦略推進機構と工業技術院・物質工学工業技術研究所は28日、ゼオライトを管状、繊維状、織物状に自由に成形できる形態制御技術DBMD(動的バルク体溶解)を開発したと発表した。ゼオライト類を自由に形態制御できることによって、環境関連の触媒やFC、エレクトロニクス素子などへの応用が期待される。(日本工業新聞00年9月29日)
 
 
― This edition is made up as of September 29, 2000 ―