49号 燃料電池ボートがドイツのボンで進水

Arranged by K. Koseki
1.国家的施策
2.PAFC
3.PEFC
4.SOFC
5.燃料電池自動車
6.燃料電池ボート
7.燃料電池バイク
8.ジエチルエーテル(DME)

1.国家家的施策
 資源エネルギー庁は、7月18日に開いた「燃料電池実用化戦略研究会」で、燃料電池実用化に向けた民間による新しい"協議会"の設置を打出した。また、燃料電池の基準・標準化と制度問題の検討に当たり、既存の民間団体組織における活動と連携を図るかたちで、組織を構成することが望ましいとする提言をまとめた。 エネ庁が協議会設置を提言した背景には、内外の民間企業における技術開発や、ミレニアムプロジェクトの進展で、燃料電池の各種データや技術的知見の集積が行われるため、これらをベースに基準・標準の議論を深めていくことが重要と判断しているためである。 民間の新協議会は、ミレニアムプロジェクト予算事業の成果を活用して、各種の課題解決に向けた議論を行う一方、その成果を予算執行に反映させる。また、協議会の下に自動車、定置用および燃料供給インフラごとに基準・標準制度問題を検討するワーキンググループの設置も提案している。 (化学工業日報00年07月21日) NEDOは「高効率燃料電池システム実用化等技術開発事業」の開発テーマ14件(応募は27件)およびその開発委託先を決定した。 同事業は高効率燃料電池システムの普及促進を図るため、実用化に必要な技術を開発するというもので、@燃料電池システムにかかわる各種部品の標準化に必要な基盤を整備するための部品・評価試験装置の試作 A燃料電池システムの実用化を促進するための、各種部品、システムなどの技術開発の2点がテーマ。 受託機関は、(財)日本自動車研究所、(社)日本ガス協会(4件)、日立製作所、東芝、松下電器、日本電池、三洋電機、旭硝子、住友金属工業、松下電工、長野計器(化学工業日報00年8月11日)
 
2.PAFC
 日清製油は従来のガスタービンコージェネレーションに200kW燃料電池を組み合わせることで、夏場のガスタービンの最大出力を17%向上できる新システムを開発、磯子工場に導入した。新システムは燃料電池から排出される熱で吸収式冷凍機を駆動し、ガスタービンに供給する空気を冷却する。空気の冷却でガスタービンの効率が上がり、夏場のコージェネレーションの発電出力を5200kWから5900kWに引き上げることができるという。 (日経産業新聞 2000年7月25日)
 
3.PEFC
 東北電力は、次世代の分散型電源として注目されているマイクロガスタービン(MGT)と固体高分子形燃料電池(PEFC)の実証試験を7月21日から2年間の予定で開始した。MGTは75kW機(米ハネウェル社製)と45kW機(米エリオット社製)の2台、一方PEFCは同社研究開発センター内に三洋電機製の水素燃料の1kW機 1台を据えつけ、性能や信頼性評価に加えて、発電機器としての技術的可能性を確認する。 (電気新聞 2000年7月19日) 東京ガスは、PEFCと独自の燃料処理装置を組み合わせた「家庭用燃料電池コージェネレーション」の実証試験を進めているが、2001年度から大規模なフィールドテストに着手し、2004年度の商品化にめどをつける。フィールドテストの規模は1kWを一般家庭10数戸に設置してテストする見通し。テストでは、こうした導入効果を実用レベルで実証するほか、小型・軽量化の検証、コストダウンの可能性などを、連続運転により確認する。とくにコストダウンでは、家庭用燃料電池コージェネレイションの価格を給湯機の価格(35万円)プラス15万円の50万円程度にすることが可能かどうかも検証する計画である。 (日本工業新聞 2000年8月22日) 富士電機は、PEFCスタックの開発を続けてきたが、長時間の連続運転などにより性能の信頼性が高まったため、スタックを組み込んだシステム全体の開発に乗り出した。 開発するシステムの出力は1kW規模。今年度中にも運転試験を行い、事業化の可能性について検討する。 (日経産業新聞2000年7月11日)
 
4.SOFC
 中部電力と三菱重工業は共同で、25kW級のSOFCユニットの運転試験を開始した。SOFCのなかでも出力密度が高い連結一体積層(T-MOLB)というタイプで、同タイプの25kW級の実証は世界で初めてという。早ければ9月までに耐久性などを確認、その結果を踏まえ、実用化に向けた大型タイプの開発を進める考えである。両社は98年に出力密度が0.35W/cm2と世界最高レベルのT-MOLBの基本ブロックを開発し、このブロックを二つ連結した2kWユニットの実証を済ませている。今回はこのブロックを数十個組み合わせてユニットを組み、耐久性や、運転時の安定性を確認するものである。 (日刊工業新聞 2000年8月7日) 東京ガスは、中小規模のコージェネレーションなどで期待されているSOFCについて、数十kW程度の小容量機でも、熱的に自立運転が可能なことを、運転試験で確認した。東京ガスが開発した平板形単電池を70枚積層してスタックとし、これをスイスのスルザー社のシステムに組み込んで試験したところ、最大で1.1kWの電気出力が得られ、さらに外部から熱を加えなくても、950℃の高温を維持しながら、熱自立運転ができることが実証された。東ガスでは、小容量域での熱自立運転がクリアできたことから、今後はSOFCの用途をさらに広げるため、動作温度700℃前後で運転可能な低温作動形SOFCの開発を進めたいとしている。 (電気新聞 2000年8月24日) 関西電力は7月31日、ファインセラミックセンターと共同で、SOFCの低温作動を可能にする高性能燃料極を開発したと発表した。従来は作動温度を700〜800℃程度まで下げると、過電圧が3.5倍に上昇し、発電効率が6割近く低下してしまうが、今回開発した電極は、セリア・サマリア系混合伝導体とニッケルを、互いに絡み付くネットワーク構造に焼き付けることで、過電圧を抑制した。 (電気新聞 2000年8月1日)
 
5.燃料電池自動車
 米GMとエクソンモービルは、燃料電池車搭載用の高効率のガソリン 改質器を共同開発した。GMは1年半以内に同技術を搭載した燃料電池車の実地走行試験を実施する。GMはこのガソリン 改質器と出力25kWの燃料電池スタックを組み合せたシステムのデモテストを実施する予定である。同社ではこの出力25kWのスタックは、自動車としての用途に必要な効率レベルに到達しつつあり、さらに将来、定置形燃料電池システムの開発促進にも寄与するとしている。この改質器によるガソリンを燃料とする次世代燃料電池システムは、サイズ、重量ともに現行型に比べ、半分以下になる予定である。両社はこのシステムを、水素を燃料とする本格的な燃料電池が一般的に広まるまでの、今後10年間のつなぎの技術として位置づけているが、米フォードモーターもガソリン改質技術を採用する公算が大きく、当面は燃料電池車はガソリンスタンドという既存インフラを活用した形で広がる可能性が強まっている。 (電波新聞 2000年8月12日、日本経済新聞 2000年8月11日、 日刊工業新聞 2000年8月22日) カナダのバラードパワーシステムズ社は、本田技研工業を含む自動車メーカー2社から最新の燃料電池システム「マーク900シリーズ・フューエルセルパワーモジュール」および付帯設備を受注したと発表した。受注金額は2件で150万米ドル。「マーク900」燃料電池はコストの安い材料を用いるとともに、自動車に搭載しやすいようにデザインされた次世代タイプで、本田など2社からの受注は、ダイムラークライスラー、フォードに続く受注となる。 (日刊自動車新聞 2000年8月7日) バンクーバーで2年間実施されたのPEFC燃料電池バスデモンストレーションプロジェクトが、7月はじめに成功裡に終了した。同時プロジェクトでシカゴで2年に渡って実施された燃料電池バスデモンストレーションは3月23日にやはり成功裡に終了している。シカゴでは液体水素から搭載ボンベに30分以内に充填していたのに対し、バンクーバーでは水電解装置から1晩かけて搭載ボンベに充填した。バンクーバーでは67,000 kmの走行と110,000人の乗客を記録し、その間事故は発生しなかった。Ballard Power SystemsとXcellsis Fuel Cell Engines Inc.はCalifornia は次のプロジェクトを計画しており、そのプロジェクトでは2年以内に25台の燃料電池バスを走らせる予定である。最初のバスはPalm Springs とOaklandで走ることになろう。 (HyWeb-Gazette 2000‐08‐03)
 
6.燃料電池ボート
世界で2番目の燃料電池ボートがドイツのボンのベンチャー会社etaing社によって建造され、6月19日、ボンの人造湖で進水した。(世界初の燃料電池ボートは1990年代の初めにEuro-Quebec Hydro-Hydrogen Pilot Projectの一環として建造され、北イタリアの湖で試験されている)。 ボートは"Hydra"と名づけられ、レジャーボート用に特別にデザインされたZetek社の5kWアルカリ型燃料電池とバッテリーのハイブリッドシステムにより、8k Wの電気モータで推進する。燃料は水素で32m3の水素を吸蔵する水素吸蔵合金タンクを搭載しており、航行距離は約80km。 "Europ21"と名づけられた燃料電池システムが故障した場合には、バッテリーから電気が10分間供給される仕組みである。ボートの排水量は4.3トン、長さは12mの木製で、トップスピードは6ノット。また価格は529,000ドル。ボートは試験航行と正式の船舶認定書をもらった後、Leipzigで営業運航される。 (Hydrogen&FuelCell Letter July2000 Vol.XV/No.7、 )
 
7.燃料電池バイク
Manhattan Scientifics 社は、スイス・ローザンヌで7月に開かれた"Fuel Cell 2000" conferenceで670Wの円筒形PEFC燃料電池で駆動する、マウンテン・バイクを展示した。 PEFCは前輪の上に取り付けられ、重さは780g。 また燃料は水素で、300barの圧縮水素ボンベ(2Lのカーボン繊維強化ボンベ)をサドルの後ろに取り付けて走る。 Manhattan Scientifics 社の説明によると、この"Hydrocycle"は70-100kmの走行距離があり、最大スピードは30km/h。バイクシステムのエネルギー密度は205watts/kg、115watts/Lで鉛バッテリーやニッケル水素バッテリーシステムの数倍の密度。またPEFCスタックのエネルギー密度は860w/kgおよび590w/l。来年の末には売り出すとのこと。 (Hydrogen&FuelCell Letter July2000 Vol.XV/No.7)
 
8.ジメチルエーテル(DME)
 燃料電池の燃料としても注目されているDMEについて、日揮、三菱ガス化学、伊藤忠商事の3社は共同で、DMEからの都市ガス製造プロセスを開発、従来の液化石油ガス(LPG)やナフサ、開発中のメタノールからの都市ガス製造プロセスに比べ、コスト面でも有利となる見通しであり、新たな代替天然ガスの有力な供給源となる可能性を示した。 DMEは燃やしてもSOXやすすをまったく発生せず、環境負荷の少ない燃料として、軽油の代替や燃料電池への導入への期待が広がるとともに、輸入ソースがサウジアラビアやインドネシアに集中しているLPGやナフサに比べて、天然ガスや石炭からの製造が可能なDMEの供給安定性などが、にわかに注目され始めている。 (化学工業日報 2000年8月7日) DMEの燃料利用に関する産学のDMEフォーラム(仮称)が8月中旬にも設立される。フォーラムには藤元東大教授の研究グループの他、三菱ガス化学、日本鋼管、伊藤忠商事など関係する企業が参加し、DME用途として期待される燃料電池自動車や都市部,離島などの分散型電源用燃料利用、既存火力での代替などを視野に、流通、利用まで含めたDMEの普及策を検討する。 (電気新聞 2000年8月8日)
 

 
― This edition is made up as of September 1, 2000 ―