1.国家家的施策
2.地方自治体の施策
3.PAFCシステム
4.SOFCの開発成果
5.PEFCの開発
6.住宅用PEFCコジェネシステム
7.FCV最前線
8.FCV実証運転試験
9.超小型PEFCデバイスの開発
10.改質技術の開発
11.燃料関連の技術と戦略
12.FCV市場分析と予測A POSTER COLUMN「Are fuel cell companies ready for the challenge? 」
資源エネルギ―庁のDME戦略検討会は、火力発電プラントやFC等、電力分野においてDMEを燃料として利用するための課題を整理し、その利用を促進するための政策を検討することになった。DMEは石炭、天然ガスを原料に生成される無色のガスで、SOxやすすが全く発生せず、環境負荷が小さい。DMEは最も構造が簡単なエーテルで、燃料としては従来ガソリン製造の中間物質として考えられていたが、原油価格の低下に伴って興味は低下し、現在は世界で年間15万トン、日本で約1万トンが製造されているに過ぎない。現在オゾン層を破壊するフロンの替わりにスプレー式燃料などに使われている。99年11月、通産省の補助金を受けて、太平洋炭鉱と鉄鋼メーカ2社が、炭鉱から発生するメタンガスからDMEを高効率でかつ安価に製造する技術を開発した。資源エネルギー庁はこれを受けて、2000年3月に石炭・新エネルギー部石炭課長の私的研究会としてDME戦略研究会を設置し、デイ―ゼル車用途に加えて発電用燃料としての適用性の検討を行ってきた。(電気新聞00年6月26日)2.地方自治体の施策
資源エネルギー庁は、分散型電源の増加傾向を踏まえて"系統連系技術要件ガイドライン(系統連系ガイドライン)"の改定に着手することになった。(電気新聞00年7月10日)
愛知県は、2000年6月20日、2005年開港予定の中部国際空港の基本構想を発表したが、その中で同県企業庁はFCを中心とする新技術の研究開発地域、および最新技術を使って環境に優しい"まちずくり"を試みる環境共生あるいは社会実証地域の2つのモデル地区を設定することを明らかにした。本構想(プロトンアイランズ基本構想)によると、空港島の107haと対岸の120haの造成に当たり、FCなど新エネルギーを取り入れた環境配慮都市を形成することにしているが、研究開発地域では、FCの研究センターや企業などを誘致して水素供給の実証実験等もできるような拠点施設を建設し、FC技術の交流や新産業の育成を図ることを目的とする。又常滑市の空港に近い地区に設ける社会実証地域では、FCバスを運行したり、FCや太陽電池を取り入れた環境共生型住宅を導入する。愛知県は本構想を具体化するため、エネルギーシステムなどの基本構想の策定や、企業・研究センターの誘致を進める一方、気体燃料の配管設備などFCの開発に必要な基盤整備を土地造成に合わせて行い、開港時までには整備を終わらせる予定である。(日刊工業、中日新聞00年6月21日、日本経済新聞同6月22日)3.PAFCシステム
東京ガス、大阪ガス、東邦ガスの3社は、2000年6月22日に、東芝と共同で開発したPAFC組み込み型無停電電源システムの実証試験を、名古屋市熱田区の東邦ガス本社で6月23日から開始すると発表した。これは99年10月から開発を進めてきたもので、発電した直流電力をそのまま利用する"直流高効率利用技術"を無停電電源システム(UPS)に活用したPAFCの利用である。その特徴は1)従来のUPSで生じていた約10%の電力ロスを半減、2)UPSのバッテリー容量の削減が可能、3)従来のUPSと同等の高品質・高信頼の電源供給を実現、4)FCからの電力のみならず、排熱を給湯・空調へ利用、などである。従来の無停電システムに対する新システムの投資回収年数は、国からの導入補助を含めて3ないし5年で可能と試算、4社では実証試験を経て、2000年10月の商品化を予定している。4.SOFCの開発成果
実証試験に使用するシステムは、東芝/ONSI製200kWPAFCを交流から直流供給型に改造して、無停電電源システムの直流部分に直接接続した構成で、通常はFCから重要負荷と一般負荷への給電を同時に実施しているが、停電時もFCから重要負荷に対して高品質な電力を供給するので、バックアップ発電機が不要である。万一FCが停止した場合は、系統からUPSを通して重要負荷に給電される。実証試験では、パソコン電源などを重要負荷として、実用時におけるシステムの実用性、経済性を評価することにしている。4社では今後のコンピュータ社会の発展に伴って、全世界で年間数千台の市場規模があると予測している。
(電気、日刊工業新聞00年6月23日)
ファインセラミックスセンター(JFCC)の大原智副主任研究員等は、ファインセラミックスの異なる原料粉体を複合微粒子化する噴霧熱分解法を開発した。原料粉体の複合微粒子化は、ファインセラミックスの機能最適化や新機能創製を狙ったミクロ構造制御手法の1つとしてクローズアップされている。同法で0.1ないし数μmのオーダーで粒度の揃った球状粒子を合成することができる。最大の特徴は、広い温度領域で熱処理すると出発粒子が入り混じった高分散型の複合粒子が、狭い温度領域で熱処理すると一方の原料が他方の原料を被覆する被覆型の複合粒子が合成されることである。ランタン・ストロンチウム・マンガン硝酸とイットリア・安定化ジルコニアを出発原料にした高分散型複合粒子は、ナノメートルサイズのランタン・ストロンチウム・マンガン酸化物とジルコニアの微粒子が高分散状態になり、ミクロンオーダーの球状粒子になっている。同粒子を原料としてSOFCの電極材料を作成すると、これまで1000℃前後でしか得られなかった分極値を、800℃前後の低温でも実現できたという。又酢酸ニッケルとイットリア・安定化ジルコニアを出発原料とした被覆型複合微粒子は、酸化ニッケルをジルコニアが覆った粒子となるが、同粒子を原料とした電極は1000℃でも性能が安定化しており、1000時間当たりの劣化率は0.1%であったと報告されている。(日刊工業新聞00年6月30日)5.PEFCの開発
富士電機は、PEFCスタックの開発を行ってきたが、その性能について信頼性が高まったと判断して、システム全体の開発に乗り出すことにした。同社はPEFCの開発では松下電器産業などに後れをとっていたが、システム開発を促進することにより、実用化競走での先頭グループ入りを目指す。(日経産業新聞00年7月11日)6.住宅用PEFCコジェネシステム
(1)トヨタ7.FCV最前線
トヨタは2000年6月22日、住宅用PEFCの開発に乗り出したことを明らかにした。都市ガスを燃料として、発電と同時に排熱を給湯や床暖房に利用するシステムで、同社が生産する住宅"トヨタホーム"での採用を考えている。これにより家庭で使用するエネルギー量の20%程度を削減することができると同社は述べている。この一環としてグループ大手のアイシン精機は、東京ガス、大阪ガス、東邦ガスの3社とPEFCの共同開発に着手した。トヨタは住宅用では当初数百万円での製品化が可能と見ているが、将来的には自動車用を含めてkW当たり10万円レベルを目指すことにしている。(中日新聞00年6月23日)(2)東芝
東芝は天然ガスやLPGを燃料とする家庭用出力1kW級PEFCの製作に乗り出すことになった。先ず2000年度中に数台を製作、ユーザへも提供して評価を得た上で、2005年には数百台ないし数千台を販売できるレベルにまで引き上げる。コストは1kW当たり30万―50万円を想定している。同社はNEDOプロジェクトで30kWの可搬式PEFCシステムの製作に加えて、IFCと共同で自動車用を目的に開発を進めているが、この度独自で家庭用1kW級の商業科へ向けた開発を加速することにした。他方IFCは5−10kWの量産を目指した開発を進める計画である。(日刊工業新聞00年6月26日)(3)日本ガス協会
日本ガス協会は、99年2月から2000年2月まで、NEDOからの助成金を得て、又協会独自でも、家庭用コジェネレーションの開発を進めてきた。これまでに松下電器産業、三洋電機、松下電工の1kW級PEFC各社製3台の運転試験を実施したが、それらはパッケージ型で、既存の電力系統に連係して家庭内の電気製品に電力を供給するとともに、排熱を温水として回収し、家庭での給湯・暖房に利用するシステムである。同協会は、2002年頃から実際の住宅で運転試験を始め、2005年頃から導入・普及を図って行くことにしている。導入初期の発電効率は30−35%、熱を含めた総合効率は70−80%を目標とし、又普及のためのイニシアルコストについては、1台当たり50万円程度を実現する必要があると考えている。その他の課題としては、補機の最適化、インバータの高効率化、放熱ロスの削減、又家庭における電気や熱の需要に合った運転制御方法の開発、耐久性・信頼性の検証が挙げられている。(日刊工業新聞00年6月30日)
(1) 韓国8.FCV実証運転試験
韓国の"Hyundai Motor Co.とアメリカIFCは、少なくとも2台、恐らくは4台の実証用スポーツFCV(sport utility vehicles)を共同で製作することに合意した。このニュースは2000年5月にHyundaiによって発表された。水素燃料IFC製75WPEFCスタックが駆動源として、Hyundaiの新型Santa Fe SUVに搭載される。Hyundaiは、両社の共同開発による最初の成果が、2001年の第1四半期が終了する以前にも発表できることを期待すると述べているが、恐らく2001年のDetroit Auto Showにそれを出展したいとの意図があるからであろう。このPEFCはほぼ常温で動作する簡単な構造の設計になっているため、それは将来ユーザに提供する車のコスト削減を有利に展開できるとHyundai America Technical CenterのKim所長は述べている。しかし、水素燃料の車内での貯蔵・搭載方式については、何も語られていない。(Hydrogen & Fuel Cell Letter, June 2000, Vol.XV/No.6, p1)(2) GMとGiner, Inc.
GMは、FCVの商業化を加速するため、Giner, Inc.,Waltham, MAと共同でジョイントベンチャー企業を設立しようとしている。新会社のGiner Electrochemical Systems, L.L.C.,(GES)が何を開発の中心課題に据えようとしているのか、具体的な発表は何も無いが、SOFCを狙っているのではないかとのうわさも囁かれている。GMは、Harry J. Pearce副会長の言葉を引用して「GMのFCスタックは標準的な産業技術(industry benchmark)レベルにあり、これらFC技術の商業製品化を加速するために、GESが重要な技術を提供することになろう」と述べ、他方GinerのJose Giner会長は「我々は補完的な役割を担うことになる。GMはFCスタックの設計分野では最高級の能力を持つ(some of the best people in the area of fuel cell stack design)が、我々はFCのみならず水電解、キャパシター、センサーにも応用できるイオン交換膜技術では、世界のリーダ的な地位を獲得している」と語っている。(Hydrogen & Fuel Cell Letter, June 2000, Vol.XV/No.6, p1)(3) ドイツBavaria州のFuel Cell Day
ドイツBavaria州のMinistry for Economics, Transport and Technologyがスポンサーとなって2000年の5月初旬に開催された"Fuel Cell Day"を記念して、2台の新しいFCバスのプロトタイプが公開された。先ず交通機関用FCの開発分野では世界的にリーダーとしての地位を築いてきたBallardのFiroz Rasul氏、DaimlerChryslerのFerdinand Panik氏、Opel/GMのEehard Schubert氏、BMWのDetlef Frank氏等による基調講演が催されたが、それらが終わると多くの一般人や報道関係者が展示されたFCVや水素エンジン自動車の周りに群がった。最大級のFCV展示であり、参加者は近隣のヨーロッパ各国から数百人に及んだと報告されている。この展示にManのバス以外に、2年前にFCのデベロッパーに参入したProton Motor Fuel CellおよびNeoplanによって製作されたバスが新しく出品された。過去に開発された実績も展示されており、特にDaimlerChryslerのNecar 2, 3, 4、BMWの水素エンジンセダン、Opel Fuel Cell Zafira、又LindeとSiemensの共同開発によるFC駆動フォークリフト、更にMTU FriedrichhafenのMCFCシステム"Hot Module"等は多くの人々の注目を集めたようである。
2台のバスの内、一際華やかな(sleekest looking)それは、Proton MotorとNeoplanから出品されたBavaria IIであった。33席を持つこのバスは、長さ10.6m、低床式で、車体とシャーシーは一体化構造になっており、カーボン強化プラスチックで作られている。外見は光沢のあるスマートな形状を示している。動力源はProton Motorの設計による出力80kWのPEFCシステムで、重量は210kg、低圧動作で18のスタックから構成される。動力システムはハイブリッド型で、出力100kW級のフライホイールをFC以外に備え、加速や上り坂においては不足の出力を供給するとともに、回生制動による電力の回収が可能である。燃料となる水素は、バスの屋根の上に備えつけられた4つの150lit.容量のタンクに高圧ガスとして蓄えられ、それは250kmの走行距離を保証する。Bavaria州はDM250万($115万)の資金をこのバスを開発するために補助した。 Proton MotorでFCバスの開発を担当する役員Andreas Schiegl氏は「わが社はFCシステムを構築することのできるヨーロッパの数少ない会社の1つである。我々のような125人の従業員を抱えるだけの小さい会社でさえ、このような事業を成功させることができることを示す生きた証拠である」と語っている。
"Bavaria II"はMan製のFCバスで、車体は長さ12mの箱型である。動力源は出力120kWのSiemens/KWU製PEFCのみで、回生制動によるエネルギーの回収機構は備えていない。バスの屋根に設置された高圧水素ガス貯蔵装置は、複合カーボン繊維で作られた1,548lit.のシリンダーであり、250kmの走行が可能である。水素貯蔵関連の設備はLinde AGによって製作された。全開発コストは約DM1,350($620万)と見積もられているが、その半額は州から補助された。試験運転を経て後、2000年の末にはNuernbergとErlangenで、公共の交通機関として運行されることになろう。
Manはこの特殊なタイプのバスを今後生産する計画は無いと語っている。その大きな理由はSiemensが交通機関用のPEFCを生産する意図が無いからである。Manは液体水素を燃料とする第2世代のバスを開発することを予定しており、PEFCはイタリアのDe Noraが供給することになると予想されている。
(Hydrogen & Fuel Cell Letter, June 2000, Vol.XV/No.6, pp2-4)
運輸低公害車普及機構は2000年12月、アメリカ運輸省とジョウジタウン大学が開発したメタノール改質PEFC(バラード製)搭載のFCバスを輸入し、東京都内の一般道路で実証運転を行うことになった。運転試験期間は1ヶ月程度の予定で、その間政府関係者や関係省庁、報道機関、NGOなどを招いて公開する。同機構は、FCVの実用モデルに試乗することにより、自動車メーカの開発意欲を向上させるとともに、一般に対してFCVを強くアピールすることにしている。(日刊自動車新聞00年7月11日)9.超小型PEFCデバイスの開発
アメリカ国防省の資金の基に、Case Western Research Universityの研究チームは、鉛筆に付けられた消しゴムの大きさの超小型PEFCの開発を進めている。これは携帯電話器やコンピュータ用電源にも利用されるであろうが、当面軍事用を目的として開発されている。すなわち、これは超小型センサーにFCを組み合わせたデバイスで、戦場で化学兵器が使われた時、センサーが危険な成分をキャッチした場合、その信号を遠方の兵士に送るためのトランスミッターとして使われることが想定されている。したがってその仕様は、水素を燃料とする1ないし20mWの電力需要に応えられる電源で、その容積は約5mm3と極めて小さい。同研究チームのリーダであるRobert Savinell教授は「キーテクノロジーは微細加工技術であり、我々は低コストの基板上に、セルのコンポーネントを多層構造にプリントする手法を用いた。基板材料としてはシリコン、セラミックス、種々のポリマーなど安価で大量生産が可能な材料が探索された。全ての平板状カソードの上に直接空気が接触し、他方アノードには燃料の水素が直接触れているので、流体を循環させるためのポンプが不必要で、非常に簡単な構造と小型化を実現した点に特徴がある」と語っている。更に同教授は「重要なのは膜であり、カソードが直接空気に触れる構造のため、比較的広い湿気(15−100%)でプロトン伝導性が保持できるような膜を開発しなければならない。我々はこのような性能を満足する新しい材料を探索している」と述べている。10.改質技術の開発
膜に関する1つの選択は、スルホン酸基を持つポリイミドのコポリマーを基盤とする膜で、これは低温動作を前提とするものである。膜の分子構造にナノサイズの穴が搾けられており、これが水分を蓄えることによりイオン伝導性が保持される。第2の膜材料の選択は、燐酸をドープしたポリベンズイミダゾールを基盤とするポリマーの1種で、常圧かつ200℃の高温に耐え、低湿度でもイオン伝導性を持つ。これは高温動作ができることから、比較的高いCO濃度を持つ改質ガスでも使える点に特徴がある。
水素を貯蔵する方法として、パラヂウムインキが使われた。パラヂウムはセル電圧0.8Vにおいて、1,800mWh/cm3の容量を持つだけの水素を蓄えられる。
Savinell教授は「電極および集電体をフィルム膜にスクリーンプリントした構造のFCで、20mA/cm2の電流密度において10mW/cm2の出力密度を実証した。又10msecで50mA/cm2のパルス放電の実験も実施された。10万サイクル以上の実験でも性能に関して全く悪い影響は表れなかった」と伝えている。
(Hydrogen & Fuel Cell Letter, June 2000, Vol.XV/No.6, pp4-5)
松下電器産業はCOの変成反応部に白金系触媒を使って、PEFC用水素生成器を小型化する技術を開発した。試作した水素生成器は高さ800mm、幅250mm、奥行き250mmで、従来銅系触媒を使う場合に比べて体積は半分になっている。都市ガス又はLPGと水から2cu.m/hrの水素発生能力を持ち、生成水素中のCO濃度は10ppmに抑えることができる。水素生成器はメタンと水を反応させる改質部、COと水を反応させる変成部、残ったCOを酸化するCO浄化部によって構成される。改質部にはルテニウム系触媒、変成部には新開発の耐酸化性白金系AD(Air Durable)触媒を、そしてCO浄化部には白金系触媒を使う。変成部の白金系AD触媒は、空気に対して耐性が高いため、頻繁な起動・停止に対応できると共に、耐熱温度が約600℃で従来使われていた銅系触媒の300℃に比べてはるかに高いので、変成反応を高速化によって機器の小型化が可能になった。これで家庭用PEFCコジェネレーションシステムの開発に弾みがつくものと思われる。(日経産業、日本工業、電波新聞00年6月22日、日刊工業新聞同6月23日)11.燃料関連の技術と戦略
(1)石油連盟12.FCV市場分析と予測
石油連盟は、2000年6月末にも、"石油利用FCプロジェクト(仮称)"を設置する。FC燃料としての石油系燃料は、脱硫ライトナフサから現行の内燃機関用ガソリンまで広い範囲の種類が検討の対象となっており、それが燃料選択の困難さの原因にもなっている。又燃料の選択いかんによっては、製造設備とインフラに大きな影響を与えることになる。そこでFCに関する戦略的活用の可能性を追求し、かつ石油系燃料の情報を対外的に発信することにした。(日刊工業新聞00年6月21日)(2)トヨタ自動車
トヨタ自動車は、木材からメタノールを抽出し、FCV用燃料として使用する技術の検討に入ることになった。木材からのメタノール抽出法は効率の面で問はあるが、通常行われている天然ガスからの生成に比べると、ガス田が近隣に無い場所でもメタノールの合成が可能であるとともに、又環境負荷の低い燃料生成技術としての長所を持っている。木材からのメタノール抽出は、バクテリアによる分解作用を利用する方法が確立されており、チップ状にした木材にバクテリアを植え付け、木材の成分であるセルロースを糖に分解し発酵させる。この自然の生態系で行われている作用を人為的に行うもので、微量のCO2が排出される以外に有害物質が排出されない。ただメタノールの生成スピードが遅く、効率面での問題があるとされている。トヨタは国内での森林再活性化事業やオーストラリアでの植林事業を通じて、森林資源の有効活用法を検討していくことにしている。(日刊自動車新聞00年6月23日)(3)広島大学・京都大学
広島大学総合科学部の藤井博信教授と折茂慎一助手および京都大学原子炉実験所の福永俊晴教授の研究グループは、グラファイトをナノ単位にまで細かくすることにより、現状の水素吸蔵合金に比べて3ないし4倍の水素吸蔵能力を持つ物質の開発に成功した。同研究グループは、高純度グラファイト粉末を、10気圧の水素ガスを満たした容器の中で80時間鋼鉄の玉と一緒に転がしてすりつぶすことにより、直径数ナノ(10−9)メートルの結晶粒からなる微粉末(直径数μm)にしたところ、炭素原子の間に水素を取り込んでいることが判明した。水素の吸収能力は重量比で7ないし8%であり、液体水素の約十倍の水素が詰め込まれたことになる。なお加熱により簡単に水素を吐き出させることができる。グラファイトは水素を吸蔵しないと思われていたが、同じ炭素系のカーボンナノファイバーは吸蔵能力が高いことから、藤井教授らはナノ単位まで細かくすれば可能性はあると考え、この研究に着手したと述べている。この方法によれば、材料が安く入手でき、水素吸蔵合金に比べて製造法が簡単である。水素ガス中で処理する点に独自性があり、同教授は「実用化に向けて、処理時の気圧を上げて圧力と吸収能力との関係を調べると共に、100℃以下で水素を取り出せる方法を探りたい」と語っている。(中国新聞00年6月29日)
― This edition is made up as of July 21, 2000 ―
A POSTER COLUMN
1999年11月、アメリカの21州およびカナダの2州において、電力の小売業の競争を促進するための規制緩和措置が採られた。この規制緩和は、消費者が電力供給業者を自由に選択させようとする措置で、多くの人々は競争の激化によって電力価格は下がる方向に向かうと予想している。FrostおよびSullivanによって書かれた本論分は、このような北米大陸の市場環境において、FC産業はいかにして定置式FC市場への浸透を図るべきか、その戦略を論じたものである。
FCは"環境にとって良い電力(green power)"ではあるが、環境に良いという理由だけで消費者はその電力を選択するわけではない。彼等が最も問題にするのは、その価格である。FrostおよびSullivanは、現在の価格よりも10%以上高い電力を消費者は選択しないであろうと指摘している。DOEが発表した1998年におけるアメリカの平均電力価格を基準に電力価格の限界値を計算すれば、家庭用に対しては9.1cents/kWh、業務用については8.17cents/kWh、産業部門では4.95cents/kWhとなっている。カナダにおいては、特に僻地において電力価格が20cents/kWh以上の高い値を示しており、このような地域ではFCは浸透しやすいと考えられる。カナダの会社はこのような僻地における市場開拓を視野に入れている。
定置式FCにとって有望と考えられる市場に、遮断されることの無い高品質な電力を必要とするユーザが含まれる。特にしばしば雷雨や熱波に襲われる地域にある会社は、FCに対して強い関心を抱いている。
今後エネルギー需要の増大に備えて余分な供給容量を確保するために、分散型電源やオンサイト発電に対する需要の増大が考えられるが、その対策として大部分のユーザはFCを理想的な技術と見なしていることが、FrostやSullivanの調査で分かっている。しかし、先に述べた高品質な電力を必要とするユーザを含めて、FCが未だコストが高く、かつ確立された技術ではないという危惧から、FCを現実的な選択ではないと考えているようである。彼等の関心はFCよりはガスエンジンやガスタービンにより強く傾いている。
1999年における北アメリカの定置式FCプラントの市場はUS$2,300万の規模になり、それは2005年までには約US$3億にまで成長するものと予想される。表1は2005年までの出荷ユニット数と売上高の予測値であり、表2には各種FCに対する2005年時点における年間売上額と設備容量が示されている。
(Fuel Cells Bulletin, May 2000, Number20, pp6-10)
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