43号 三菱電機のPEFCスバルサンバーに搭載

Arranged by T. HOMMA
1. 国家的施策
2. 設備規制緩和
3. PAFC導入実績
4. MCFC
5. SOFCの開発
6. SOFC/GTシステム
7. PEFC技術関連
8. FCVニュース
9. FCV用燃料
10. 家庭用PEFC
11. 燃料改質に関する新技術
12. DMFCの開発

1.国家的施策
(1)自民党
自民党は2000年1月26日、石油等資源エネルギー対策調査会(佐藤信二会長)を約1年ぶりに開催した。席上通産省・資源エネルギー庁から、“FCについては実用化戦略研究会で検討が進められていること、国際的な標準化のためにも研究の推進が必要である一方、それは燃料供給体制などのインフラ整備と一体で進めなければならない”等について現在の課題が紹介された。新エネ政策について、加納時男議員は「新エネには夢があるが、同時に影の部分もある。量、質、価格、時間を考えた冷静な議論が求められる」と述べ、一般に過大な期待がもたれていることに対する懸念を表明した。
(電気新聞2000年1月27日)

(2)通産省・資源エネルギー庁
 資源エネルギー庁は、1月27日、新エネルギーの実際的な潜在量は原油換算で3,800万―6,400万klであるとする試算結果を発表した。これは将来の1次エネルギー総供給(TPES)の6〜10%に相当する。経済性に関する試算では、量産化や運転年数の長期化g実現した将来の新エネ発電コストは、例えば太陽光発電(住宅用)が24円/kWで既存エネルギー価格の1.1倍、PAFCが20円/kWで同0.9倍、PEFCが37円/kWで同0.8〜1.1倍等と推定している。(日刊工業新聞2000年1月28日、化学工業日報同年1月31日)
 資源エネルギー庁は、PEFCについて、燃料価格の分析や海外の研究開発動向調査、国内の規制緩和の方向性などを民間企業主体で検討するための協議会を設立する予定で、そのための準備作業を開始した。新エネルギー財団を事務局に置き、トヨタ、東芝等のメーカ、燃料を扱う東京ガス、大阪ガス等を含む関係企業の参加を得て近々に発足させる予定である。 又99年12月に発足したFC実用化戦略検討会で抽出した課題については具体的な調査を行い、5月末予定の同検討会報告骨子に反映させたいとしている。同会はこれまで、コジェネレーションならびに水素、天然ガス、メタノール等燃料のコストや効率の評価、デファクト・スタンダードも睨んだ海外メーカの動向、安全規格など保安規制緩和のあり方などを課題として指摘している。 更に同庁は家庭向けの定置型と自動車用では燃料組成に差があることを考慮して、個別の課題について民間企業主体でより詳細な調査・検討を行うことにしている。(電気新聞2000年2月3日)
 資源エネルギー庁の“石油産業発展方向性検討委員会”は、第3回ワーキンググループを開き、1)FC普及による石油製品需要と燃料供給インフラへの影響、2)FCに対する対応方向についての論点整理、3)新たな燃料品質規制に対する最近の動向、について討議した。この結果、自動車用と家庭用定置型FCの普及を前提とすれば、石油製品需要への影響は2020年頃からガソリン、A重油、灯油などで数%程度の減少が生じるとの見通しを得た。FCが燃料供給インフラに与える影響については、スタンドの改造を前提に試算した結果、メタノールは1件当たり2,000万円となるが、水素燃料については改質方法によって8,000万円から4億円と大きな幅が算出されている。現在、FCスタンドの普及見通しが困難なため、インフラ整備資金の予測は立っていない。仮にメタノール系FCが普及することになれば、メタノールプラントを建設する必要が生じ、それが日量100万バーレルであれば1兆円に及ぶ資金が必要となる。
 石油業界は、FCが将来の2次エネルギー供給源になることを視野に、技術開発とインフラ整備に取り組んでいく必要があると考えている。改質や脱硫技術でも多くの課題が残されており、消防法や劇物取締法の法的規制面も重要な問題である。結論としてFC燃料の選択を決断するのは時期早尚とのことであった。
(化学工業日報2000年2月7日)

(3)NEDO
 NEDOは2000年4月から、HAB室(水素・アルコール・バイオマス技術開発室)がPEFCの開発を担当し、PEFCの実用化に向けて総合的に開発を加速させることになった。PEFCの開発予算は、99年度が10億円であったのに対して、2000年には50億円と5倍にまで増加するので、開発体制を強化させることにした。2000年度までの5年間には、東芝が30kW定置型、三菱電機が10kWの可搬型、三洋電機が2kWの家庭用の3タイプについて電池本体の開発を行ってきたが、2000年度からは、普及のために必要な整備基盤事業として、安全性・信頼性の評価基準の決定や、FCシステムの基盤技術開発としての標準機による耐久性・安全性の試験、評価試験の実施等が加えられる。特に安全性・信頼性の評価基準、試験方法の規格化等のテーマには、13億円以上を配分することになっている。
(日刊工業新聞2000年2月1日)

 NEDOは2月29日、水素製造・貯蔵の開発・実証研究の委託先として、22件の応募の中から6件を採択した。自動車用では水素を多量かつ安全に貯蔵する技術を、民生用では改質器の小型・低コスト化の技術開発を重視している。委託先6件は*水素エネルギー研究所、*大阪科学技術センター、*出光興産、*大阪ガス、関西新技術研究所、*コスモ石油、*石川島播磨重工、東京ガスである。
(日刊工業、電気新聞2000年3月1日)

(4)環境庁
 環境庁は2000年度から、地域の廃棄物等をベースに、FCによってエネルギーを供給する地域循環型エネルギー供給モデル事業を開始することにした。3月中にも業者入札を終え、早ければ4月から着工、試運転を経て夏ごろから本格作動させる意向である。予算額は4億円、試験地域として都市部2地域、農村部1地域を選定し、試験期間は2〜3年程度となる予定である。都市部では、主に事業系生ゴミを収集し、メタン発酵によってバイオガスを生成、それをFCに導入するが、余剰ガスは精製プロセスを経てCNG車用の燃料として使用することも検討する。更に状況に応じて建築廃材の利用なども視野に入れることにしている。農村部では、主に間伐材などの木質系廃棄物を収集、チップ、堆肥化などの前処理を行い、メタノールを生成してこれをFCの燃料として利用する。可能であれば家畜糞尿・し尿などの利用も検討したい考えである。環境庁は今回の実証試験を通して地域循環型エネルギーシステムのあり方と実用性を模索したいと語っている。
(化学工業日報2000年3月1日)

(5)アメリカ政府
 アメリカ政府によるFC開発関連の2001年度予算要求は、1億ドルを超える模様である。風力、バイオマス/バイオ燃料、太陽光発電等を含む新エネルギー関係のDOE予算要求額は、前年度比55%増となるが、水素関連は減少する。DOEの全予算要求額は189億ドルで9%増である。主に内務省(Interior Department)によって執行されるFC関係の開発投資額は、自動車等交通機関用が4,150万ドル(前年度予算額3,700万ドル)、定置式に対しては4,220万ドル(同3,760万ドル)、そしてビル用などのコジェネレーション用が550万ドル(同355万ドル)となっている。定置式発電用FCの開発項目には、次年度から始められる分散電源としての300kW〜1MW級SOFCプロトタイプの実証運転が含まれている。又自動車用については、FCエンジンのシステム化とPNGVに基ずく試験、多様の燃料が利用可能なFCシステム(fuel flexible FC system)開発がテーマとして挙げられている。
(Hydrogen & Fuel Cell Letter, March 2000, XV/No.3, p2)
 

2.設備規制緩和
 資源エネルギー庁は、1,000kW未満の内燃力発電所、1万kW未満のガスタービン発電所およびPEFC発電所について、常時監視を必要としない発電所とする方向で検討を進めることにした。電気設備技術基準の、省令で審査基準を定める“解釈”において、常時監視をしなし発電所の施設として、これら施設を適用できるかどうか、保安確保などの観点から検討し、2000年度内に結論を出す予定である。現在、電気設備の技術基準に関する省令で、早期に異常を発見する必要のある発電所については、同一構内で技術員が常時監視をしなければならないと義務ずけられている。他方、この基準は97年に大幅改正され、審査基準を定める“解釈”第51条により、保安上問題の無い施設については、常時監視を要しないものとして扱うことができるようになった。
(電気新聞2000年2月23日)
3.PAFC導入実績
 ガス事業者によるオンサイト型PAFCの稼動実績は、99年12月末現在、37台、発電容量は6,200kWであり、1時期に比べて台数・容量共に減少している。東京ガスが田町地区で92年11月から運転しているONSI社製200kW機の累積運転時間は47,500時間に達したが、既に4万時間を越えている東京イースト21、東京ガス袖ヶ浦工場、同千住営業技術センターでの3機は運転を終了した。大阪ガス管内ではかなりの数のプラントが運転を終了しており、稼動中のプラントではUNEPセンターの富士電機製50kW機が累積43,700時間で最長となっている。
(化学工業日報2000年1月31日)
4.MCFC
(1) NEDO/MCFC研究組合
 MCFC研究組合は、2000年2月8日、1,000kW級外部改質方式および200kW級内部改質方式MCFC発電プラントの試験運転を終了、両システムとも試験運転は順調に行われ、プロジェクトは成功であったと発表した。MCFC研究組合は、NEDOの委託を受けて87年以来MCFCの研究開発を進めてきたが、中部電力川越発電所に建設した1,000kW級プラントについては、99年7月から試験運転を開始、同年11月5日には定格出力に到達、そして2000年1月28日に累積運転時間は4,916時間、累積発電電力量は2,103MWhに達して運転を終了した。他方関西電力尼崎燃料電池発電所に設置した200kWプラントについては、99年6月28日に運転を開始、同年7月に定格出力200kWを達成、運転終了時の2000年2月2日で、累積運転時間は5,036時間、累積発電電力量は1,134MWhに到達した。今後は両システムを解体し、セルの性能劣化状況と電解質の減少率、金属の腐食の状況などを分析する。同組合は「今後は700kW級モジュールを開発し、7000kW級発電システムで発電効率50%を目指したい」と語っている。
(日刊工業、電気新聞、化学工業日報2000年2月9日)

(2)東京電力
 東京電力は、MCFCの電解質板材料として注目されているα型リチウムアルミネート繊維の合成に成功した。出発原料に市販のγ型アルミナ繊維と炭酸リチウムの混合物を用いて、反応温度600〜650℃、炭酸ガス雰囲気下で24時間程度焼成したところ良好なα型リチウムアルミネート繊維が合成された。従来MCFC電解質板の補強材として用いられていたアルミナ繊維への代替品として期待される。アルミナ繊維は溶融炭酸塩中で腐食劣化し、電池の耐久性を劣化させると共に、腐食生成物が電解質構成材と同じリチウムアルミネートであることから、粒子成長現象や結晶型変換現象などの影響が避けられないという問題を抱えていた。このため電解質板の構成材料と同一であるα型リチウムアルミネート繊維の補強材としての開発が待たれていた。なお一般に市販されているアルミナ繊維は高温で焼成されているためα型であるが、同社が用いたγ型アルミナ繊維は低温で焼成されたもので、反応活性が高いという特徴を持っている。使用した繊維は直径50μm、長繊維構造かつ金属不純物の含有量が少ない高純度品である。
(化学工業日報2000年2月7日)

(3)MC-Power
 ここ1年間、見通しがはっきりしなかったが、アメリカの2大MCFCデベロッパーの1つであるMC-Power社が、FCの運転を中止し、会社を閉鎖する模様である。1月始めに辞任したElias Camara社長を継いだPatrick McSweeney社長代理(interim president)は、後数週間で運転を停止すると語った。彼は「会社の運営を断念するのは、財政的な事情からで技術的な問題があったわけではない」ことを強調している。同社はDOEとの定常的なコスト負担開発協定(long-standing cost sharing agreement)を続行すべく、昨年の数ヶ月に亘って資金分担パートナーを求める努力を重ねてきたが、開発資金の20%を分担する上記協定の実行が不可能になり、プロジェクトの運営を断念せざるを得なかったようでる。DOEの化石燃料局(DoE’s Office of Fossil Energy)のスポークスマンは「我々はMC-Powerが運営を中止せざるを得なくなったことを非常に残念に思う」と述べている。DOEは年間平均1,000〜2,000万ドルの資金をMC-Powerに費やしてきた。2000年度は定置式FCプラントに3200万ドルを費やしたが、その2/3がFCE(FuelCell Energy)のMCFCおよびSiemens-WestinghouseのSOFC開発計画に割り当てられた。DOEは「FCEやSiemens-Westinghouseの成果を考えると、MC-Powerの退去によって、定置式発電の将来を何ら案じる必要は無い」と述べ、「むしろ新しく提案されている製作技術やSOFCコンバインドシステム等を採用すれば、コストは$1,200/kWから$400/kWにまで飛躍的に下がることさえ期待できる」との見解を表明している。 なおMC-Powerは、Institute of Gas Technologyにおいて開発されたMCFCを商業化するために 1987年に設立された会社で、Miramar Naval Air Stationで250kW実証プラントを製作・運転した実績を持つ。
(Hydrogen & Fuel Cell Letter, March 2000, XV/No.3, p3-4)

(4) MTUおよびFCE
 FCE(FuelCell Energy)のドイツにおけるパートナーであるDaimlerChrysler's MTU Friedrichshafen unitは、同社が製作したMCFCプラント”Hot Module”による新しい発電プラントの運転を開始したようである。この発電プラントはUniversity of Bielefieldのキャンパスに設置されている。他方ロスアンジェルス市の水道・電力局(Los Angeles department of Water and Power)は、2000年夏までに250kW直接改質式MCFCを設置するため、合計価格245万ドルでFCEと契約したと報じられている。
 ドイツの試験設備に設置されているFCE製のMCFCプラントは、Bielefeld市の電力会社に250kWの電力と高温度の熱を供給することになっている。FCE社自身は、電力事業用のより大規模なMW級MCFCプラントの開発に焦点を移しつつあるが、その理由はBOPのkW当たりコストが相対的に高く、プラントの経済性を考えれば規模の大きい方が有利になるからと説明されている。現にBOPのコストターゲットはスタックの2倍と設定されている。これに対してMTUの”Hot Module”は、BOPコンポーネントをモジュールとして纏めることにより、コンポーネントの数を減らすと共に、構造を簡素化することを追求し小規模でも有利になるような設計思想になっている。FCEのCEOであるJerry Leitman社長は「Hot Moduleは我々のFCEプラントに対して重要な補完的役割を持つものであり、MTUと締結した相互市場協定(our cross marketing agreement)は、世界の市場を供給するために有効である」と語っている。
(Fuel Cells Bulletin, January 2000, No.16, p.3)
 

5.SOFCの開発
(1)TOTO
 TOTOは新日本製鉄、九州電力と共同で2003〜2004年を目途に度に、SOFCを用いたコジェネレーション設備を商品化する計画であると発表した。ホテルやマンション用に、出力100から200kWシステムを2005年にも発売し、2010年には50億円程度の売上を見込んでいる。TOTOがSOFCを開発し、新日鉄がコジェネレーションのエンジニアリング分野を担当、九電はシステムの大型化に関するノウハウなどの面で協力することになっている。2000年度中にTOTOの基礎研究所に設置された3kWの実証設備でデータを取り、2003―2004年度に出力50〜60kW規模のプラントを建設、事業化に目途をつけたいとしている。
(日本経済新聞2000年2月8日)

(2) 三菱重工・電源開発
 三菱重工業と電源開発は共同で、印刷技術を応用した湿式スラリー法で製作した円筒横縞型セルによる天然ガス内部改質出力10kW級SOFCモジュールを完成し、2000年2月末から電発若松事業所で実証実験を開始する。湿式スリラー法は、現在シーメンスウエスチイングハウス社が採用している電気化学的蒸着法と比べて製造コストが格段に下がると言われており、これに成功すればコストの大幅な低減に大きく踏み出すことになる。このセルは基本管をベースに燃料極、電解質、空気極を形成したもので、材料は安定化ジルコニア等のセラミックス系である。両社はこれまでプラズマ溶射法によってセルを製作してきたが、これを三菱重工の開発した湿式スリラー法に切り替えることにした。既に1kW級は三菱重工長崎でテストを終えており、これをベースに10kW級を開発、電発・若松に持ち込んで実証試験を開始する。セルの直径は22mm、長さは70cmであり、このセルを288本並べてモジュール化した。又改質のメカニズムに関しては、最初に水蒸気を投入すると、燃料極の酸化ニッケル・イットリア安定化ジルコニアが触媒として働き、天然ガスの水蒸気改質が始まるが、その後は発電で発生した水蒸気が循環して供給され、セルチューブで天然ガスが連続的に直接改質される仕組みになっている。この内部改質性能を1ヶ月間かけて実証し、4月からこの技術を100kW級モジュールの開発に反映させたいとの意向である。
(日刊工業新聞2000年2月17日)
 

6.SOFC/GTシステム
 電源開発は、石炭ガス化炉、SOFC、ガスタービン、および蒸気タービンを組み合わせて、石炭を燃料に59%の高い発電効率を達成し得る新発電システムを実用化するため、若松総合事業所に実証プラントを建設、2001年から3年間の発電運転試験を実施することになった。SOFCの開発も平行して進め、2008年を目途に“石炭ガス化FC複合発電(IGFC)”と呼ばれるシステムを実用化する計画になっている。電発はNEDOの資金を活用し、若松事業所に250億円を投じて日量150トンの石炭処理能力を持つガス化炉を母体とするFC燃料ガス製造プラントを建設しており、同時に三菱重工と共同で100kW級SOFCを開発中である。これらの技術を組み合わせることにより上記システムを開発するが、同社は「IGFCは高効率石炭利用技術の切り札になる」と期待している。
(日経産業新聞2000年2月4日)
7.PEFC技術関連
 碌々産業は、PEFCセパレータの量産向けカーボン加工5軸専用機“TPM-5M”を完成した。各軸に工具5本の自動工具交換装置(ATC)を装備し、又集塵システムや表面計測装置を設置した。高速切削を可能にするため、主軸回転数を3,000〜2万回転とし、ボールやガイドに影響する処理困難なカーボンの切削粉を処理するため、主軸周りに集塵システムが置かれている。又段取り時間の短縮のため、板材着脱にはバキュームプレート方式が採用された。セパレータはスリット状で、従来はステンレス鋼製であったが、小型化や切削性の良さ、効率生産の観点から素材がカーボンに替わっている。月間4〜5台を販売、本体価格は2,550万円である。
(日刊工業新聞2000年2月28日)
8.FCVニュース
(1)Westminster City Council
 Westminster City Councilは、出力5kWのAFCエンジンを持つZevco製バンを入手した。積載重量は1200kg、最高スピードは100km/hで、Westminsterの公園、庭園、広場において保守用バンとして運行される予定。
(Fuel Cells Bulletin, January 2000, No.16, P3)

(2)東芝・IFC
 東芝とアメリカのIFCは共同で、ガソリンを燃料として駆動するPEFCシステムを開発した。今まで東芝は出力10〜50kWのPEFCを製作し、IFCはガソリン改質装置の研究開発を行ってきた。東芝はメタノールや液体水素を燃料とするFCシステムよりはガソリン燃料の方が自動車メーカに受け入れられ易いのではないかと期待している。現在製作中のプロトタイプは出力50kWのPEFCシステムで、2000年1月から試験運転に供せられることになっている。IFCのWilliam Miller社長は、今の試みがすべてうまく進めば、2005年までには実用車を世に出すことができるであろうと語っている。両社は自動車メーカと既に5つの協定を結んでおり、名前が挙げられている唯一の自動車会社はBMWである。
(Fuel Cells Bulletin, January 2000, No.16, P2)

(3)三菱電・富士重工
 三菱電機は、富士重工業のスバル研究所と共同で、三菱電機が開発している扁平型セルスタックを用いたメタノール燃料PEFCシステムを、富士重工の軽貨物車“スバルサンバー”(排気量660cc)に搭載し、2001年に走行試験を行うと発表した。バッテリーとのハイブリッドシステムで、スバルサンバーの床下に全ての機能を収納することになっている。三菱電機は2000年度に出力10kWのPEFC2機種を完成させるが、1機種は可搬型、他の1機種を自動車に搭載して実用化のための実証試験を実施することにしている。同社はこれまでにNEDOプロジェクトにおいて、厚さ12cmの扁平5kW級スタックを試作し、0.8kW/lit.の出力密度を達成した。又厚さ14cmの扁平積層型5kW級メタノール改質器の試作・運転の実績を持っている。2000年度までに常圧・メタノール燃料で、セル電流密度500mA/cm2、平均出力密度0.3W/cm2以上の性能を持つ10kW級電源システムを開発する予定である。
(日刊工業新聞2000年2月29日)
 

9.FCV用燃料
(1)日石三菱
 日石三菱は、軽質ナフサをベースにしてFCVの専用燃料を開発し、ダイムラークライスラーやトヨタ等内外の自動車各社に提案する予定である。同社は「既存のインフラ活用を考えればFCV用燃料には石油製品がベスト」と見ているが、既存のガソリンでは、硫黄や芳香族などの不純物の含有量が高く、それが水素に改質するための負担を大きくすると指摘されており、そこで不純物を除去しやすい軽い留分の軽質ナフサを主原料とすることによって、改質効率を高めようと考えている。新燃料は、既存のガソリンと同様に扱われ、ガソリンスタンドなどの既存の供給インフラを活用できること、およびエネルギー密度が充分高く、長い航続距離を確保できる、の条件を満足すると期待されている。国内の石油大手がFCV用燃料の独自開発に乗り出すのは始めてのことである。
(日本工業新聞2000年2月4日)

(2) バイオマス
 農林水産省は、農山漁村におけるエコシステム創出に関する技術開発の一環として、FCV用燃料となるメタノールを農作物から生成するための研究開発を実施することにした。原料は、稲ワラ、牛の飼料、家畜糞などで、バイオマスを直接メタノールに変換する技術であるC1化学変換を適用し、ガソリンの税込価格と同程度でメタノールを生産できるような技術の研究開発が目的となっている。C1化学変換によるメタノール生成技術とは、稲ワラなど上記原料の他、サトウキビの絞り粕、生ゴミなどを乾燥・微粉砕し、部分燃焼させてCOと水素を生成し、これらのガスを触媒によってメタノールに合成する手法である。農林水産省装置試験場が実験プラントを開発する。
(化学工業日報2000年2月23日)
 

10.家庭用PEFC
(1)松下電器産業
 松下電器産業は、PEFCによる発電出力1.5kWの家庭用コジェネレーションシステムを開発し実証試験を開始した。このシステムは幅95cm、高さ90cm、奥行き32cmで、燃料には一般家庭で普及している天然ガスやLPGが用いられる。熱は給湯と空調に使われ、今後実際の家庭での使用を想定した試験を行う予定で、2004年の実用化を目指している。総合効率は70〜80%、価格は1.5kWで50万円以下などが、商業化の目標として掲げられている。
(電気新聞2000年2月14日)

(2)東京電力
 東京電力は、一般家庭や商店などを対象に、PEFCを分散型電源として活用するシステムの構築とその事業化を目的として、2000年度中にPEFCコジェネレーションシステムの実証実験の乗り出すことになった。今夏にも国内メーカなどから発電出力1〜3kW級のPEFCを複数ユニット購入して実証実験を始め、耐久性やコジェネレーションシステムとしての信頼性などの評価を2000年度末までに終了する。東電は3月上旬に、日石三菱などと共同で分散型電源事業の新会社を設立するなど、従来の大規模発電一辺倒の電力供給戦略を1部転換する考えを持っているが、分散型電源では当面ガスタービンを主力電源として事業展開し、次いでPEFCを組み入れる方針のようである。
(日本工業新聞2000年2月28日)

(3)コロナ社
 暖房機器製造のコロナ社は、2月24日、家庭用PEFCコジェネレーション分野へ進出すると発表した。この分野で先行しているアメリカのノースウエストパワーシステムズ(NPS)と2月21日に技術提携し、同社からは1〜3kWPEFCユニット技術を導入、コロナはFCシステムを日本用仕様に改良する研究と、既存の暖房器具と連動させるための周辺システム開発を担当する。当面はメタノールを燃料として試験を進めるが、2000年中には灯油燃料の改質に関わる研究にも着手する予定。10億円近い研究開発費を投入し、2003年には実用化を達成したいと同社は語っている。
(新潟日報200年2月25日、電波新聞同2月28日)
 

11.燃料改質に関する新技術
 ドイツの小規模シンクタンクMannesmann Pilotenwicklung GmbH(mpe)は、電子技術的手法によって、アノードにおける触媒のCO被毒効果を軽減できることを明らかにした。上記の”Pilotenwicklung”とはパイロット開発者を意味するドイツ語である。この手法は、高いCO濃度によって被毒を受けたときに上昇するアノードでの過電圧を、電気的パルスによって、通常の値にまで低減させようとする技術である。実験では7秒ごとに発信される100msec幅以下のパルスが用いられた。同社の自動車用技術開発担当の上級技師長(senior technical manager for automotive applications)のHolger Klos氏は、10,000ppmまでのCO濃度を持つ改質ガスによっても、PEFCは正常に動作したと語っている。彼等が製作したデバイスは、2000年の3月20〜25日に開催される年次Hannover Industrial Fairにおいて公開される予定であるが、2kWPEFCに取り付けられたパルス発信器の大きさは、10cmх5cmх20cm、重量は300gで、出力2kWのPEFCに取り付けられたパルス発信器の写真が雑誌に公開されている。試験結果を示す1つのグラフは、1,000ppmのCO濃度を持つ改質ガスによって生じた120mVの過電圧は、このパルス発信によって73mVまで低下し、10,000ppmのCO濃度においては、150mVの過電圧が約88mVまで低下したことを示している。又実験結果は、パルスの発信に伴うエネルギー損失は、1,000ppmの場合で2%、10,000ppmの場合で8%であった。Klos氏によれば、酸化に要する酸素は恐らくセル中の水分から供給され、又全プロセスのエネルギー効率は、クリーンアップ法に比べて高く(more efficient in the entire energy chain)なるであろうと述べている。又彼は「もしこのmpeの技術がこの通り有効であれば、特に自動車用FCエンジンの分野において、燃料プロセスにおける革命的な変革をもたらすことになるかも知れない(it would be a revolution in terms of process technology)」と
語っている。
 Mpe社の第2の成果は、燃料のマイクロプロセッサーに関する技術開発である。最初の設計の1つは、メタノール改質用マイクロ反応器に適用されたが、Klosはこの技術は他の炭化水素系燃料の改質にも応用できると述べている。実験室でのデータをベースにして、例えば出力50kWFCにおける改質器、触媒燃焼器、シフト反応器から構成される燃料処理装置の大きさを推定すれば、従来の技術では277kgになるのに対してこの技術を適用すれば50kgにまで軽減されるはずである。Klosは改質器単独では従来の方法に比べて重量では1/5に、選択酸化器は少なくとも1/6になり得ると述べている。又反応器の昇温時間も従来技術における2〜5secに対して新技術では1sec以下と推定している。この技術もHannoverで公開される。
(Hydrogen & Fuel Cell Letter, March 2000, Vol.XV/No.3, p1, p6-7)
12.DMFCの開発
 カナダのトロントに本拠を置くEnergy Venturesは、100%株を保有するその子会社が、DMFC技術において重要なブレークスルーを達成し、カナダの特許を申請したと発表した。Karl Kordesch、Viktor Hacker、およびオーストリアのTechnical University of Grazとの共同研究成果で、今までDMFC実用化の障害とされていたメタノールのクロッスオーバーの問題を解決したと宣言している。この技術は、高価な膜や電極を用いることなく、システムの出力を30〜40%上昇させることを可能にするはずである。研究チームはGraz工科大学と協力して、2000年の初頭に実証ユニットを作る計画を進めている。
(Fuel Cells Bulletin, January 2000, No.16, p3)
― This edition is made up as of March 1, 2000 ―